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Makkyのあしたっていまさ!

cysmakky.exblog.jp

てきとーにまったり。主にSTGや東方を中心としたゲーム系雑記だよ。

-雅と私、レトロスペクティブな時間- 第47回

Makkyです。
正真正銘、最後のレトスペ記事となります。
これで一旦レトスペ更新は停滞しますが、
このブログが終わるわけではないです。
また何かあったときは夢の続きを。

初見の方、詳細を知りたい方はコチラへどうぞ → http://cysmakky.exblog.jp/17382733


雅な時間 Final_d0284766_13375547.jpg
桜を、待った夢見夜



第一部総集編



第二部総集編



第三部総集編








最後の「雅な時間」
ラストの”考察”記事は、各種主題歌にスポットを当てていきます。
まずは第三部CSから起用された、クレジット曲から。

Can't look away
元は東方神霊廟ステージ5の道中曲「夢殿大祀廟」のアレンジボーカル曲で、
お馴染みのサークル:FELTさんの楽曲のひとつだ。
アレンジでは聖徳太子とその妻である刀自古郎女をモデルとした、
「豊聡耳神子」と「蘇我屠自古」の生前と、
霊体として復活したあとの世界を現代風にイメージした歌詞となっているが、
その歌詞のひとつひとつが作中の史規と霊夢を彷彿とさせるテーマ性、
そして物語のシナリオにもピッタリなフレーズが盛り沢山なのである(前にもいった)。
※歌詞に関しては著作権保護のため「引用」しての掲載となります。ご了承ください。



『Can't look away』
 Original:「東方神霊廟」より “夢殿大祀廟”
 Album: Rebirth StoryⅡ
 Vocal : Vivienne
 Lyric : Renko
 Chorus : Vivienne & W.nova
 Arrangement : Maurits"禅"Cornelis
 All Instruments & Programming : Maurits"禅"Cornelis
 Copyright © 2010 / 2014 FELT / feltmusic.net

Listening to the beat the DJ's playing and thumping.
Our eyes just met. You've caught me and I'm falling so deeply.
So, maybe if I get a little closer tonight...
Side by side, you and I
Could dance the night away.

Just can't turn away. I think I've lost all my senses.
Right now, I can't decide if I should ask for your name.
So, baby, won't you give me just a bit of your time?
People stare. I don't care.
I'm really giving in.

Realize
That change is happening.
Can't deny
I'm feeling limitless.
Here, tonight,
Please let me see the stars,
Find a sign.

"Time is money."
Or that's what they say.
"Sweet as honey."
There's something I'm craving.
See the world as
a place for mistakes.
Love just blinds me,
But you have shown me the way.

"Time is money."
Or that's what they say.
"Sweet as honey."
There's something I'm craving.
See the world as
a place for mistakes.
Outside, looking in.

You're written in my memory. I can't erase this.
The thought of being's fleeting. Chasing a dream.
No longer counting minutes, I can't control it.
This change inside has got me. Now, I can't look away.

Pulling up a ride so maybe I can convince you
The road we'll take tonight stretches from here to the middle.
Don't let me ask you twice and let's go for a drive.
Take me there. Anywhere.
You always lead me astray.

Captured in your eyes. I know my gaze may just linger.
The starry lights rush by and I am caught at a standstill.
No questions here this evening. I am fighting inside.
Sitting here. Do I dare?
Let's spend the night away.

Even if
We fail a thousand times,
We can't take
This chance for granted.
So, take this night
And drive a million miles.
Once again...

Beginning from the center, I can't remember.
But when I look again, some pieces remain.
No longer do I notice painful refrains when
Defining all my memories each time I stay awake.

You're written in my memory. I can't erase this.
The thought of being's fleeting. Chasing a dream.
No longer counting minutes, I can't control it.
This change inside has got me. Now, I can't look away.

<意訳>
DJのかけるビートに耳を澄まして
目と目が合う。あなたに見つけられて、心の鼓動もうちはじめる
今夜もあなたに近寄れたら
二人並んで、夜を踊り明かせるのに…

もう背を向けられない、何も考えられない
あなたの名前を聞くべきか答えを出せずにいる
だからせめてもの願いとして、あなたとの時間をもう少しだけ
皆のいる前で認められてほしい
この内なる心の変化は、もう何者にも逆らえない
無限大に膨らんだ、この夜に輝きを示したい

”もう時間がない”なんてあなたはいうけど
”良い子だね”とそんな言葉をかけてほしい
この世界は思い違いの場所かもしれない
愛が見えなくする
だけどあなたが見せてくれた

”もう時間がない”なんてあなたはいうけど
”良い子だね”とそんな言葉をかけてほしい
(繰り返し)窓の外を眺めて

あなたが心に刻まれて、私はかき消すことができず
足早に流れていく想いは、まるで夢を追いかけているみたい
何分もかからないうちに制御不能になってしまう
心が沸き起こる変化に、何も視えなくなってしまう

きっとあなたにわかってもらえる、そう思って乗り込んだ
この道は私たちを、夜のこの場所から「はじめ」へと導いてくれる
あそこへ行きたい、何処へでもいい
あなたはいつも迷ってばかりね
あなたの瞳の中には、きっと思い留まるような私の視線があって
星屑が流れたら、私は行き止まりにつかまってしまうでしょう

今夜は何も悩まない。そう決めたから
ここに座ってもいい? なんて思いきれるかしら
夜の向こうへ行きましょう
たとえ、私たちがどれほど失敗したとしても
このチャンスを当たり前だとは思わない
だから今夜は100万マイルもドライブしましょう
もう一度ね…

最初の頃はもう思う出せない
でも振り返れば、いくつは思い出せるよ
だけどもう、目を開けている間に思い出される
痛むような思いには、気が付かなくなった

あなたが心に刻まれて、私はかき消すことができず
足早に流れていく想いは、まるで夢を追いかけているみたい
何分もかからないうちに制御不能になってしまう
心が沸き起こる変化に、何も視えなくなってしまう

雑な和訳ご了承ください…
レトスペ的解釈で受け取ると、
CSで描かれた史規を媒体とした罪の異変が肥大化していく様、
そしてそれを受けて博麗の巫女として背負いきるという霊夢の決意と、
彼らが交わした約束と似たフレーズが自ずと見えてくる。
しかも、その決意と約束を確固たるものとしたのは33話「霊夢」での二人きりの夜。
それがキッカケとなり、この繰り返しに終止符を打つこと、
そして「何処へ行く?」という問いかけまでも含まれているのだから驚きだ。
曲名もそのまま和訳すると 「目を背けてはいけない」 。
「Endless Night」とあわせてこの2曲は本作を語る上で決して外してはいけない、
絶大な影の裏方となったのだ。



桜を、待った夢見夜
本編では使われることがなかったが「レトスペ」を語る上で決して外すことのできない楽曲。
今はもう活動を終了してしまっている東方アレンジサークル:QLOCKSの放つ、第一弾アルバムより。
所謂、無印でのエンディング主題歌がこれだ。
この曲の素晴らしさがあったからこそ、次に語る「engage」に繋がる。
原作でもエンディングスタッフロール曲である「紅楼」と、
「さくらさくら」を融合させただけあって、
由々しき終わりの曲だが、私にとってのはじまりでもある。
それはまたのちほど。
※歌詞に関しては著作権保護のため「引用」しての掲載となります。ご了承ください。


 Original:「東方紅魔郷」より “紅楼”、「東方妖々夢」より”さくらさくら”
 Album: 東方紅幻燈
 Vocal : ERIKA KANATA
 Lyric : Renko
 Arrangement : 久遠
 Copyright © 2007

舞う花びら 空は詠う
夜明けの桜が思い出すのは
廻る優しい物語
さくら さくら さくら さくら
遠き夢の逆月 揺れる夜宵空映す
散り行く花びらに 二人の足跡さえ消える
もしもすべてを忘れてしまっても
きっと笑顔で会いたい
さくらよ舞え 闇に光れ
私を彼方へと運ぶ標となれ
懐かしい記憶
消えていく
掌に落ちた涙も全て 包み
この魂が還る日まで
さくら さくら
夜宵降り咲く雪よ
あの日きいた歌も 夢幻の時に霞消える
ずっと心の傍で笑ってた 貴方の声が聞きたい
さくらは舞い 風に踊る
雪のように儚くてだけど愛しくて
思いを乗せるの
遠い影 移ろう夢
「はじまり」を紡ぎだす
過ぎ去りし
春がまた光を射す
さくらは咲く 青い空透き通る
乱れ舞う花幻の向こうに
歩き出す風に添われ 微笑む貴方に今
辿り着く また廻るさくらの唄

第二部の紅魔館編、第三部の白玉楼編の総合的エンディング曲であると同時に、
幻想郷の待つ春をイメージとさせる美しい戦慄は今尚色褪せない。
正直、私も無印の出会いを尊重している理由のひとつでもあるほどに思い入れがある。
この曲を聴くだけで無印が想起され、そして何かしら物事か終わるときに必ず聴く存在にまで昇華していった。
つまり、この記事を書いている最中にも聴いているわけです。
私にとって「終わり」の代名詞となったものだからこそ、今回の題字にも起用しました。
それほどに「終わった…」感が根強い曲であり、
これまでの記憶がいつでもすぐ蘇ってくる起爆剤のような感覚に誘われます。
つまり、「振り返る」ための”過去”を見つめ直す曲。
輪廻転生と、それに抗う魂の歌。
いつかかえってくるとき、
いつかかえってくる場所は「レトロスペクティブ東方」で綴られた物語そのものを体現しているかのよう。
故に満足度も高いものに仕上がっているのだが、
それが何故本作では起用されなかったのか。
そこをこの場で紐解いていきたい。
そのためには次に紹介する「engage」が必要不可欠なのだ。


engage
本作のエンディングスタッフロール曲。
無印をよく知る人からすれば、新曲にさしかわったことはさぞ驚かれたことだろう。
だが、私はこの曲に”辿り着いたとき”、雅として再スタートした意味、
リビルドとして新たな道のりを示し、共にここに至れたことに無印以上の感動を覚えた。
確かに曲単体としては「桜を、待った夢見夜」のが好きかもしれない。
しかし、それはあくまでも曲単体というカテゴリでみたときに限る。
「作中歌」としてみたとき、
雅としてのスタッフロール曲では「engage」がさらに極まっているのだ。
元々はサークル:凋叶棕さんが同人誌「エンゲージ」を題材に、
レミリアとパチュリーの馴れ初めを綴った作品。
音楽としても「映画のエンディングテーマ」を目指したとあって、
その納得の完成度にはまさに映画を目指したレトスペとしてもピッタリだ。
誤解があってはいけないが、決して「『桜を、待った夢見夜』超えを目指して」の選曲ではなく、
雅として”音楽としてのキャスティング”を最適解にするために「engage」が起用されたという点。
このふたつは比較の対象にならないことを先にお伝えしておこう。
ただ、その意図を紐解くため、気付くためにはやはり歌詞に着目しなければならない。
これまでと同様に意訳を踏まえて解読していこう。


 Original:「東方紅魔郷」より “亡き王女の為のセプテット”
 Album: 薦
 Vocal : 3L
 Lyric : RD-Sounds
 Arrangement : RD-Sounds
 Copyright © 2007 / 2013 凋叶棕

When I was alone
I lost all clarity
I had strayed into a maze of solitary
A lone wanderer who wanted to find out
Somewhere receive me or someone to do so
Now I believe you are the one who I've searched for
Someone will take me out from this loneliness

Save me,from this whole darkness 'd solitude
Help me then accept me
Make my life completed

Every pray for everyday
That is the chain of destiny which hold us more tightly

Be with me and tell me every fantasy
Then,there's nothing I fear

Even Though this engagement
Seems to be an unavoidable curse
Still,I'm sure

I've decided to be with you
And I've been willing to be with you

Keep holding our hands forever
<意訳>
探していたこの場所
何処だか見失ってしまう前に
その手を差し伸べてと
貴女の目にいつか願っていた

全てを無くしたこの手には
もはや何も残っていないけど
それでも貴女とともに
歩いていけるなら
明日を与えて

きっと明日が
何一つ変わらないように
そっと約束してくれれば
それだけでいい

仮に運命が
そう決めたとしても
この手を伸ばしたその意思を
救いに応えたその意思を
私は信じていたい


最終回の冒頭から「はじまり」、
最終回のラストシーンで「締めくくる」。
史規と霊夢が交わした二人だけ約束が囁かれるような歌詞の意味と、
歌唱力がじんわりとじんわりと響いてくる。
その約束は二人だけでなく、
咲夜とアリスとも交わされたであろう「過去があったからこその未来」を繋ぐ意志として尊重されている。
先ほどお伝えしたように、無印版が「過去を振り返る」曲だとすると、
この雅でのエンディング曲は「未来を見据える」曲であることが伝わってくる。
その未来が余韻に繋がり、「終わったけども終わらない」感をより強固なものとするのだ。
無印版では曲の持つ満足感という相乗効果もあり、
一度観たら強烈に記憶には焼き付くが、
満足度が高いがゆえにたまにまた見返せればいいかという思考に至る。
一方、雅ではこの余韻が相乗効果として、何度も見直すことを全く苦としない、
むしろ何度も見直したくなる欲求がずっと残り続け、
見直せば見直すほどに新たな発見や考えさせられることがまた出てくるという、
ちょっと言葉にできそうにない仕掛けがそこにあり、
本当に飽き足りない作品へと仕上がった。
この違いがわかるようになってくると、このふたつの曲は決して交わらない。
どちらも違う方向性に飛びぬけたエンディングであったことが証明され、
(無印はなくなってしまったけども)雅が無印をなかったことにするという意図はまるでないのだ。
だから雅として決定的な選曲であり、
ここでもし「桜を、待った夢見夜」だったら逆にマイナスになってしまう(ミスキャストなので)。
曲単体としての思い入れ補正があったとはいえ、それでもなおここまで私に轟かせてくれたこと、
そしてまたこの曲を教えてくれたことに多大なる感謝を改めてお伝えしたい。

これまでの素晴らしい時間をありがとうございました。
そして本当にお疲れさまでした。
雅な時間 Final_d0284766_17424754.jpg



最後に
私がこのブログをはじめたキッカケは何よりも「レトロスペクティブ東方が再開する」という報を受けたことからはじまる。
無印との出会いは色々と数奇なものがあった巡り合わせなので、ここでは省略させていただくが、
とにかくちょっと他ではないくらいの思い入れがあったことからスタートしたのを今でも覚えている。
異変というか事件というか。
支持していた作品のひとつが突如として無くなったことから、既にこの未来はあったのかもしれない。
本当にそのときは信じられなかったし、何故これほどの作品が消えなければならなかったのか。
消えるにしてもその理由を知るまではどうしても納得ができなかったからだ。
何の前触れもなく消えたので、まずは情報を探ることにした。
とはいっても名前しか知らないネットの向こうにいる謎めいた作者。
無印が投稿されていた時点ではまだ何も交流もしていなかったので、
私にとってはまさに「空の上の存在」だったのだ。
手がかりという手がかりもないまま、そんな「あの空の彼方へ」を目指して動いていく。
まず、考えたのは東方にわか勢(まだデビューする前だった)の私がここまで焦っているのだから、
東方に詳しい人、私以上にレトスペに情熱を持っている人も同じように悲しんだに違いない、と考え、
レトスペから辿れるものはとことん辿った。
そうするとやはり同じようにして作品消失を悲しんでいるファンのひとりと出会えたのだ。
その方もブログを営んでおり、このときの事実を嘆いていたのである。
共通のファンをみつけ、しばらくしたのちmixiにてレトロスペクティブ東方のコミュニティをみつけた。
ここから作者と作品に通じる人と巡り合えるかもしれないという淡い期待から参入。
停滞期間が続いたが……ある日突然、mixi内にて「雅」という見慣れるタイトルが浮上した。
話によると、レトロスペクティブ東方が再スタートするかもしれないとのこと。
これは便乗するしかないと締め切り最終日に駆け込みで招待制コミュニティに参加することができた。
ここを逃していたら、今どうなっていたかはわからない(笑)
なんとそこでは作者本人がおり、実在していたのか…と感動に打ち震えた。
そもそも「何故消されたのか?」という理由を伺うために追いかけてきたのだが、
「再開する」となると、その話をするのは野暮だと思い、
しばらくその胸の内をそっとしたままに交流が始まった。
何故なら、私が思っている以上に作者自らが作品を消すという苦渋の決断を選んだこと、
その苦しさや悲しみ、葛藤は計り知れないと思ったからだ。
当人でなければわからないことをあえて選んだ理由をこちらが軽率に尋ねることは、
せっかく再開するという作者のモチベに悪影響を与えてしまうのではないか?という暗黙の了解。
伺いたい気持ちをグっと堪え、そして再開してくれるのであれば今度こそ共に終わりを迎えたい。
そんな一心のために「作品支援」という形でこの雅な時間をはじめようと誓ったのだ。
直接顔合わせをするようになり、時には食事をしたり、遊びに行ったり。
「会うこと」自体とても困難な道のりにいつしか自然に乗っかることができた巡り合わせ。
奇しくも作中の史規と霊夢の出会いそのものを体現していたこの不思議な繋がりは、
私にとってもとても大切なものへを変わっていきました。
日常の中に新たに取り込まれていく要素のひとつにまで昇華し、
8年以上繰り返されたこの日常は欠けてはならないものへと。

目標であった本編が未練なく終わり、この雅な時間も終えようとしています。
しかし、ここで出会った時間、絆、繋がりはこれからもずっと続いていくものと信じています。
これは「作品を楽しむ」以上の価値を得た唯一無二の宝物。
慢心しているわけではないですが、
自分でもひとつの作品に対してここまでやったのは人生でも初かもしれません。
それほどの熱量を注がせてくれた奇跡の作品がこれからもずっと残り続けていけるよう、
この「雅な時間」は本編とともにアーカイブとして在り続けます。
余談となりますが、最後の視聴者コメントでこんなのがありました。
雅な時間 Final_d0284766_21210713.jpg
「これに参加出来て良かったです」

なんと素敵な言葉でしょう。
こういう言葉がシレっと出てくるのはそれだけ没入感があったからなのだと実感します。
史規もきっと喜んでくれるはず。
そうなんです、私たちも彼と共にこの幻想抜けの困難を乗り越えることができたんですよ。
同じファンとして一緒に完結まで歩み続けられたこと、とても嬉しく思います。

さて、ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。
もしこのブログを通じて作品を知ってくれた方がいるならば、
是非とも本編の感想をお聞かせください。
いちファンとして、色んな意見を伺いたく存じます。

好きなものを好きなように語らう時間、
それこそが雅な時間なのですから。


2019.11.4
アイハラマキ

# by makky_cys | 2019-11-04 22:00 | レトスペ雅
-雅と私、レトロスペクティブな時間- Another⑥ Part.2

雅な時間 Another⑥ (対談企画 - 完結編) Part.2_d0284766_14060644.jpg
「雅な時間」最終回
其の弐


※其の壱はこちらから









- リスペクトされた作品の数々。

アイハラマキ: これも何度かお話したことがある内容かもですが、今度はもう余すことなくお尋ねしたいという意味もこめて「インスピレーションを貰った他作品を余すことなく教えてください。映画でもゲームでももうなんでも。」なんでも。

tokati0755: まずは映画「殺人の追憶(※1)」。自分の原点です。以前のインタビューでもお話した通りです。これを見ずともレトスペはあり得たかも知れませんが、全く違うものになっていたのは確かです。「Fate/staynight(※2)」、「魔法使いの夜(※3)」なども言わずもがなです。どちらかと言うと大きく影響を受け目指したのは魔法使いの夜の演出です。「マン・オブ・スティール(※4)」を観てから戦闘シーンの価値観が変わったのは確かです。空間を大きく使った見せ方を追求しようと思ったきっかけです。そこから「タイタンの逆襲(※5)」を観て更にもっと出来る、やらなければならないと思って行きました。あとは…子供の頃にプレイした「新・鬼ヶ島(※6)」や「かまいたちの夜(※7)」も外せません。自分を形成する今まで出会って来たものが無意識的に沢山入っているでしょうが、大きく影響を受けているのはこれらの作品です。

アイハラマキ: ありがとうございます。どれもこれも、tokatiさんに刺激を与えた作品ばかり。ご存知の方にはより一層、レトスペの魅力が味わえるかもしれませんね!これまでに私も対談でtokatiさんから色々なものを教わり、新たな価値観や楽しみを貰ってきました。マン・オブ・スティールはまだ観ていないので、これも楽しみですね(笑)

tokati0755: これを機に追って頂けるのは嬉しい事です。

アイハラマキ: STG「G-DARIUS(※8)」も直接的ではないにせよ、影響を受けているかもとチラっと伺ったことがありますが、私にとっても大好きなタイトル。何か語ることがあれば是非。

tokati0755: Gダラは改めて言うまでもなく名作ですよね。ゲームとして絶妙に面白い、映像が凄いのは当たり前として、私が一番好きなのは2ボスで出て来るクイーン・フォスルのインパクトです。「これが2ボスだなんて、信じられない。これから出て来る敵はこれ以上だと言うのか」っていう仕掛けがあったと思うんです。レトスペには最初の敵が1ボスながら明らかに強いという形でそれが色濃く反映されています。というより、そういう作品が私が好きなんですけれども。

アイハラマキ: あれの初見は衝撃的でしたね、ゲームで「震える」って体験をしたのもはじめてでした。

tokati0755: 序盤にラスボス格が出て来て負けイベントになるのとは違います。分かって頂けますでしょうか(笑)

アイハラマキ: ええ、決してラスボスでもなんでもないですからね(笑) アリスが1ボスというポジションでありながら最強という描き方もそういったところからインスピレーションを貰っていたんですね。

tokati0755: そうです。その上で、そこに理由付けも無ければならない。単にそれが好きだからっていうのでは駄目だと思ったんです。ですので、決して自ら実力を見せず語る事も無いであろうアリスは適任だったと言えます。

アイハラマキ: ラスボスといえば、Gダラのクジラルートや、クリオネルートもそうなんですが、ラスボスたる存在が道中でチラ見(もしくは最初からそこにいる)演出も実に強烈でした。事実上、フミノリ本人がラスボスでないにせよ、彼から生み出された罪の集合体がレトスペではラスボスという立ち位置となりました。このへんも奇しくもフィーリングしてますよね。

tokati0755: そうですね!その辺私はマキさんのように詳しくないんですけれども、GダラはSTG専門でないけどゲームが好き、という層に物凄く語りかけるものがあったと思うんです。ゲームとして良く出来ているのは分かるのに、とにかく映像が凄い。ゲームでなくこの演出が観たいからプレイしたくなる、という感覚は自分としては初めてでした。そういう意味でも、自分の中でこれはゲームというより映像作品なのだ、という意味合いが強いです。改めて通じるものがあるのかなと思います。

アイハラマキ: tokatiさんのよく口にする映画体験の”体験”とおなじニュアンスかもしれませんねー!「ゲームで遊ぶ」んじゃなくて、「ゲームを体験する」。この価値観は私も常に持っているものです。

tokati0755: やっぱり、筐体が当時としては衝撃でしたから。だからレトスペも、思わず観る環境を選びたくなってしまうようなものを常に目指しました。選ぶのは勿論視聴者の皆様ですけれども、そういった意識はしました。その為には自分がまずそういう気分になれるまで突き詰める事でした。

アイハラマキ: 作中にフミノリのいっていた「艶やかだ」は結構刺さるんですよね。私はもう魅入られてるクチなんですが、レトスペをよりキレイに観たいがためにプレミアム会員になったり、それはもう自分の意志で決めたことで。tokatiさん自信がプレミアムで絶対観ろよ!じゃなくて、観た者が勝手にそういう行動を起こしちゃうような。そういう魅力がね、あったんですよ。

tokati0755: この上無く光栄な事です。ほぼ全ての作者がそれを目指していると思います。そう言って頂けた事は目指していたものが報われる、とても幸せですね。

アイハラマキ: 狙い撃ちですね(笑)「やられた」ってやつです。

tokati0755: あ、狙うという感覚はむしろ無いんですよ。狙うとあざとさが出てしまう。ただただ語りかける、訴えかける、ですかね。

アイハラマキ: なるほどー

tokati0755: それしか作者に出来る事も、やる事も無いと思うんですよね。

アイハラマキ: その点においては作者として貫いた感ありますよね。レトスペが最後までブレなかったのはこちらとしても嬉しい限りで。好きすぎてGダラネタもうちょっとひっぱってしまいますが、3部のラスボスってあの巨大な罪の影と、おそらく幻想の淵になった紫の2体?がそうなのかな。ラスボスは複数いるってことと霊夢サイド、魔理沙サイドっていうルート分岐なのかな?って。実際のところ、そのへんの設定といいましょうか。ラスボス組に正式名称とかありますか?

tokati0755: 正式名称はありませんね。表現としてはそれで合っています。好きに呼んで下されば。ルート分岐に見えるのは、マキさんがGダラが好き過ぎる故ですね(笑)。Gダラに限った話ではありませんけれども、この物語には色々分岐点があったと思います。それらを全て潜り抜けた上で辿り着いたラストという事ですね。だからもしノベルゲームとして発表されていれば、別ルートとか数多のバッドエンドがあったと思います(笑)。自分バッドエンドって結構好きなので、そこにやたら拘ってしまいたくなると思いますね。「かまいたちの夜」も死亡エンドが凄く尾を引いてそれはもう素晴らしいですからね。

アイハラマキ: バッドが面白い作品でしたからね、かまいたち。そういうこともあったかもしれない死をみたさきの生。

tokati0755: 真っ先に思い出すのは事件解決編よりも全滅ENDですからね(笑)。あれは本当に怖かった。

アイハラマキ: そうですねぇ、ふりかえると凄絶なルート分岐が44話の間にいくつもあったかに思えます。バッドエンドですら回収したくなっちゃうやつ(笑)私たちが見届けたのは、そのうちのトゥルーひとつという。

tokati0755: そうです。皆様が辿り着かせて下さった本当のENDです。

アイハラマキ: 実績が解除されましたね(ポコン)

tokati0755: その音懐かしい(笑)


雅な時間 Another⑥ (対談企画 - 完結編) Part.2_d0284766_17310211.jpeg
※1「殺人の追憶」
2003年韓国映画。
1980年代に実際に起きた未解決連続殺人事件を題材とした戯曲。
二転三転するシナリオはもちろん、対となる主人公二人が最初と最後で「かわる」描写、
全体の空気感、音の使い方、色彩感覚、張り詰められた伏線などなど一切隙のない極上の作品。
話は全く違うがこの作品を観れば、「レトスペ雅らしさ」が自ずと伝わってくるだろう。


雅な時間 Another⑥ (対談企画 - 完結編) Part.2_d0284766_17313011.jpg
※2「Fate/staynight」
言わずと知れた同人発祥の超有名ノベルティゲーム。
オリジナルにあたるステイナイトは1周目、2周目~とキャラクターや時間軸は同じながら、
ルート分岐によりまるで違う展開・結末を迎えるという仕組みとなっており、
繰り返しゲームを遊ぶ上の工夫がレトスペのシナリオ構成としてのギミックに影響を与える。
どこか癖のあるテキストもこのゲームが所以か。


雅な時間 Another⑥ (対談企画 - 完結編) Part.2_d0284766_17341435.jpg
※3「魔法使いの夜」
Fateと同じくしてTYPE-MOONの放つ意欲作。通称まほよ。
サウンドノベルの頂点といっても過言ではない圧倒的ビジュアルは、
のちに「ビジュアルノベル」という確立されたコンテンツとして君臨することとなる。
静止画で構築されていながらまるでアニメーションを観ているかのような錯覚は、
レトスペ内における戦闘シーンに大きく貢献。この作品に誘発されて雅の演出方針が定まった。


雅な時間 Another⑥ (対談企画 - 完結編) Part.2_d0284766_17352135.jpeg
※4「マン・オブ・スティール」
2013年公開映画。
ご存知「スーパーマン」のリブート作品といえる(スーパーマン作品としては通算6作目)。
第37話「臨界点」、第41話「楽園」において、
熾烈を極めた霊夢と射命丸の空中戦や、二つの夢の激闘に多大なるヒントを与えた作品。
CGや実写の融合ではじめて実現された映像美を、
静止画のビジュアルノベルとして落とし込むという偉業に挑戦したあたりも作者自身の”臨界点”を是非感じてほしい。


雅な時間 Another⑥ (対談企画 - 完結編) Part.2_d0284766_17353487.jpg
※5「タイタンの逆襲」
2012年公開映画。
2010年公開映画「タイタンの戦い」の続編。
ギリシャ神話における神々の戦いを描いており、作中ラスボス”クロノス”の超巨大ぶりは圧巻。
第43話「終曲」において変貌を遂げた罪の異変との対峙シーンもこちらの戦闘シーンをモチーフに用いられている。


雅な時間 Another⑥ (対談企画 - 完結編) Part.2_d0284766_17343110.png
※6「ふぁみこんむかし話 新・鬼ヶ島」
1987年発売のファミコンディスクシステム用アドベンチャーゲーム。
「桃太郎」や「かぐや姫」など、日本の昔話から引用したキャラクターが、
独特の切り口により融合された世界観の元で活躍するゲームであり、
「絵本」を読んでいく感覚が体験できる。
「殺人の追憶」同様、エンディング突入時の余韻が大変素晴らしく、
終わったけどもしばらく過ぎ去った時間を噛みしめたくなり、
またしばらくして続きを「読みたくなってくる」感覚はレトスペの完結演出に影響。


雅な時間 Another⑥ (対談企画 - 完結編) Part.2_d0284766_17344493.jpg
※7「かまいたちの夜」
1994年発売スーパーファミコンソフト。のちにプレイステーションでも発売される。
「サウンドノベル」というジャンルを確固たるものとした極上のホラー系サスペンスミステリー。
常にルート分岐が発生し、プレイヤーの選んだ選択によって数多くのバッドエンドが存在する。
トゥルーエンドに一発でいけるのは並大抵のことではない。
音のクオリティも素晴らしく、あえての無音を演出として使っていくのも実に秀逸。
第一部・第二部で特に色濃かった謎が紐解かれていく技法はこの作品の影響が大きい。


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※8「G‐DARIUS」
1997年発売のアーケード向けシューティングゲーム。
ダライアスシリーズの4作目にあたる。
1画面筐体ながらフルポリゴンで描かれた超巨大戦艦のビジュアル的迫力と、
機械と生物の融合をテーマに奏でられた幻想的な音色は今尚色あせない。
「生命の誕生」を題材にしており、
作者の実体験を元に”生きることの意味”をメッセージ性として取り込んだ影響も大きい。
作中スタッフロールにおいて誕生をイメージさせる海(母体の中の水)も本作を彷彿とさせる。



- セリフに込められた意図。
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アイハラマキ: そういえば、シナリオ面からも質問がきています。15話だったかな?紅魔館へ向かう霊夢の前に現れた紫が言いかけた「だってあなたと彼は-」に続く言葉は? ってことなのですが。確かに、謎のまま…かもですね。でも、あえて謎のまま、な気がしてます私は。

tokati0755: それを作者が言ってしまうのはつまらない気がします(笑)。申し訳ないですけど。でもどうしても教えろと言われても、答えられないでしょう。こう思っていらっしゃったのではないか、位しか。紫の本質はそれくらい計り知れないものだと思っています。

アイハラマキ: うんうん。いろんな可能性を見出すほうが考察してる身としては面白いですし。意味があるようで、もしかしたら意味がないのかもしれないですものね(笑)紫だからこそ。

tokati0755: そうです。そもそも東方キャラの会話は深い意味があるようでありませんと断言されてますからね(笑)。それをそのまま捉えると物語は作れないのですが、そういった部分はリスペクトしないといけませんよね。

アイハラマキ: リスペクトがあるとはいえ、レトスペならではのセリフまわしとか数々生まれました。OPの各キャラクターが発するセリフはもちろん、結構印象に残るのいっぱいあるんですけど、tokatiさんが気に入ってるキャラのセリフとかってあります?私は、第33話にあった魔理沙の「無効とかいうな」かなー。これは普段の雑談のときにお話したかもですが。
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tokati0755: そうですね、パチュリーの言動なんかは書いてて凄く楽しかったのを覚えています。とぼけてる時も真面目に話す時も"らしさ"が自分の中で苦労しなかったキャラですね。台詞は吟味の上作っているので一つに絞れないですけど、43話で霊夢が叫んだあの一言は自分の中では天啓のようなもので、この一言があるからこそこの展開に出来たんだなと感慨深かったです。魔理沙は全く無理なく動いてくれましたね。以前にも言ったかなこれ(笑)。そういった台詞も自然に出て来ました。

アイハラマキ: 叫んだ…「返せッッ!」ですか。

tokati0755: そうですね。

アイハラマキ: うん、あそこ良かったな……(感嘆)

tokati0755: あれがあるから無印とは違ったラストになったと確信してますし。
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アイハラマキ: 「かえす」、「かえる」って散々聴かされた言葉の先にあれがあったので、さぞシナリオ作ってるときはワクワクしたでしょうねこれ思いついたときは。

tokati0755: ワクワクしたと言うより、霊夢がこれを叫ぶに至れたという感慨だけでしたね。それが良いものなのかどうかは観る方が決める事。43話の原稿は何度も書き直しました。でももうこれしか無い、というものに思い至れた事で、最終話にまで持っていけました。自分にとって、キャラを思い通り動かしているというよりも、後々彼女達がこれだけの事を思い、話し、決めるものを前もってどれだけ用意出来るか。シナリオ面は常にその積み重ねでした。

アイハラマキ: あー、そういう面でいくとエピローグやエンディング後の日常の彼女らがどうなったのか知りたくなってくるのにも直結してきますね。それも27話で魔理沙が「これまでどおり」って異変が終わったあといつもどうなのかをシレっと語ってたのがまた活きてて。

tokati0755: そこもまたここまでお付き合い下さった皆様一人一人の中に委ねたいし、そうであるべきですよね。やっぱりいい意味で「引き摺る」作品が自分は好きだし、ふと思い出すので。レトスペもそういった所でふと思い出して頂けたら、嬉しいと思います。

アイハラマキ: 他愛のない理由でついたタイトルがしっかり懐かしむための作品に昇華されたなぁほんと。狙ってつけたタイトルでないのが、終わったことで意味を持って、狙ったかのようなタイトルになったって凄く感慨深いですよね。

tokati0755: 確かに。連載しているうちに作品への姿勢や心掛けが全く違って来るのはよくある事だと思いますが、タイトルからして完璧なものを付けられているのは企画コンセプトがしっかりしているという事なのでしょうね。

アイハラマキ: あとは妖夢の「斬れないものは-余り無いから」も良かったですね。絶妙な改変だったかと。

tokati0755: そこに気付いてくれたの嬉しかったですね。そうなんですよ、原作では「あんまりない」なんですが、作中ではあえて「余り無い」なんです。たった一文字を変えるだけであの場では一番しっくりくるセリフ回しになったなと。妖夢としても覚悟の表れが出るかなとある種捻ってみたんですが、拾ってくれてホっとしています。
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アイハラマキ: 伝え方がお上手なんですって。ワシもジジイになったらレトスペの語り部になろうかのうホッホ。

tokati0755: 急にどうしたんですか(笑)

アイハラマキ: 思い出だけど、思い出だけに終わらせたくないので(笑)

tokati0755: それも全て人の意志一つで出来るんですよね。改めてここまで観て下さった全ての方へ心から感謝します。




- 閑話休題~作者とファンの距離感。
(対談の最中に脱線はつきもの。
マジメ一貫で進むのもいいですが雑談を絡めて肩の力を適度に抜くのもまたいいのです)

アイハラマキ: レトスペ制作を終えて、来年は我々も夜更かししない生活を少しずつ取り戻していきたいですね(笑)

tokati0755: 確かに。

アイハラマキ: 深夜3時っていうターニングポイント(※)をなくして、1時くらいにはお休みしてる日常に戻ってくれば、いろいろからだの具合も変わってくるかも。この時間帯が好きってのもありますけどね(笑)

※tokatiさんも私も仕事からの帰宅時間の都合上、
作業活動にあてる時間帯が真夜中12時過ぎとかでした。
限られた時間の中でギリギリ無理のない時間帯というのが深夜3時をノルマにやっていく式。
1日2~3時間ほどのデイリーミッションです。
仕事の疲れで休むときは休むスタイルですが、
次の日に影響のない程度に就寝時間を定めて作業をお互いに進めていきました。
ときには早朝5時すぎにまでまたぐことも(笑)

tokati0755: それはそうですね。ただ本当に帰って寝るだけの生活はつまらないので、なかなか難しい所です。

アイハラマキ: 確かに。そこは私も同じで、だからこそお付き合いお願いしちゃってる部分もありますね・・・

tokati0755: こちらは大丈夫ですけど、確かに人としてちょっとおかしいですからアドバイス通り生活改善は考えています。ちなみにクリスマスのご予定は?

アイハラマキ: クリスマス?しらないなぁ……

tokati0755: 栗喰います。

アイハラマキ: tokatiさん栗お好き?

tokati0755: あまり好きではないです(笑)

アイハラマキ: 実は私も(笑)

tokati0755: なんかパサパサしてるのが。でも味は美味しいですけど、栗ご飯とか駄目なんです。食感かな。おでんの玉子が苦手なのもこれです。

アイハラマキ: (アルコールアレルギーなんで)お酒の入ってないモンブランとかならいいんですが。あるいはトロトロのくりきんとん。

tokati0755: わかるー。やはり調理法次第ですよね。

アイハラマキ: わかるー、くりごはん無理・・・出されたら食わざるをえないけど。ウチではまず作らないですね・・・

tokati0755: しかも食べれますけど、不味い!と言えないもどかしさがあります(笑)なにこの、なに?みたいなところで。

アイハラマキ: 美味しくないわけじゃないんですよね。お前のことは好きくないかも・・・っていう(笑)

tokati0755: なんかむずがゆい苦手感ですよね(笑)

アイハラマキ: 好みだけじゃなくて苦手なのも似てるの笑う

tokati0755: 苦手度も同じくらい(笑)

アイハラマキ: こういう縁って不思議とあるもんなんですね……。ここまで一緒だからレトスペもそんだけ好きになったのかな……。生涯でtokatiさんだけですわ。

tokati0755: そうなんですか?!波長が合わないとここまで追っては頂けませんよね。光栄です(笑)しかし何より大切なのは、レトスペ含め相手を理解しようとする心掛けですよね。探究心というか。探求してくれるから答えているのであって、それで共通点が多く見つかっているということだと思います。

アイハラマキ: なるほど……

tokati0755: でもまず探求したいと思える相手でないといけなくて。やはり双方どちらが欠けてもこういったやり取りはなかったでしょうね。

アイハラマキ: あと、距離感もいいのかもしれません。

tokati0755: それかなりありますねー。

アイハラマキ: スカイプ(もしくは配信チャット)頻度は確かに多いかもですが、直接会う間柄でないことと、メールやLINEで頻繁に連絡を取り合ってる仲でもないので。そして、レトスペ内でいうなら作者とファンの隔たりを私自身守ろうとつとめてるふしがありますし。

tokati0755: あるなあ。いやほんと、それを踏み越えるような人だったらお付き合いしていないです(笑)それは隔たりというか、平等であるものだから。

アイハラマキ: 私にはあんまりハっとしないんですが、どのへんまでいくと踏み込んだ感じになってしまうんでしょう。

tokati0755: 難しい所ですけど、一言で言えるのは「これだけ好きなのだからこの作品は自分のもの」的発想が感じられると引いてしまいますね。これだけ好き、が凄く有り難いだけに、難しい所なんですよね。

アイハラマキ: 私大丈夫ですか、そのへん間違ってたりしてませんか。

tokati0755: だから大丈夫ですってば!「この音楽絶対使って下さい」、「この展開がレトロらしいと思うのでこうして下さい」なんて発想をマキさんはしないでしょう?そういう所ですね。好きが高じていつからかその作品が好きでなく相手に自分の好きなものを見せて貰う事に思考が摩り替わっていたら大変です。本当にこれは難しい問題で、ほぼ善意の元なので本人は無自覚ですし。だからと言って要望を全てシャットアウトしても成長も展開も無いですし、自分としてはその選別が大変でした。

アイハラマキ: なるほど。自分の好きなものの強要かぁ……考えさせられます。まだアンチのほうがマシだったり?

tokati0755: まあアンチが含まれてても対応に困りますけれども(笑)普通に好きでいてくれれば。もっと好きなのはその方自身や周りへ拡げて行ってその作品で「遊べる」人かな。




- レトスペ制作にかかった環境スペック。

アイハラマキ: レトスペと同じく、幻想入りシリーズ動画のとある作者さんから質問を頂いております。答えられる範囲で構わないのですが、「実際に動画を製作するにあたっての環境を教えてほしい」とのことです。パソコンスペックや、クレジットにのってないような情報ですね。

tokati0755: 環境ですか、酷く質素なものです(笑)。製作環境は PC・タブレット・コーヒー ですね。動画製作はとにかくマシンの寿命を削ります。やっているとマシンが悲鳴をあげているのが伝わって来ますが、必要経費だと思って。3部の途中でマシンが壊れ、完結まで作業を引き継いだのは現在使っている2台目です。BTOが好きなので2台とも容量とグラボのみ拘りました。2台目は映像制作専用マシンという触れ込みだったのですが、1台目とそう大差は感じませんでした(笑)。タブレットは「intuos4」を使いました。絵を描き始めてから一度買い替えています。最初は下描きはアナログでやっていましたが途中から全部PC上でやるようになりました。

アイハラマキ: 三種の神器みたいだ(笑)イラストの手掛け方も変わっていたのですね!前のインタビューではアナログの下絵を見せていただいたことがあったのですが、そのへんにも変化が。

tokati0755: そうですね、段々慣れて来たので自然とそうなりました。スキャンて意外と手間なので、同じ事なら省こうと思って(笑)。

アイハラマキ: 時間短縮にもなりますものね。これまでの期間で2台のPCということで、通算おいくらくらいしたのでしょうか?

tokati0755: およそ40万円位でしょうか?2台目の方が安かったと思います。

アイハラマキ: その手の仕事やってるのでどれくらいのスペックなのかはなんとなく予想つきますね(笑)あとスピーカーって拘ってます? 「音」を結構聴き入ってそこから手掛けるっていう手法をお持ちなので、どっちかというとヘッドフォンとかになるんでしょうけども。

tokati0755: そうですね、それなりのものを使っています。編集だけでなくPCで映画を観たりもしますので。ですが音を扱うソフトは「SoundForge4.5」という骨董品を使っています。こんなもの今のWindowsで動くのかと思われるかも知れませんが、何より手に馴染んでいるので。

アイハラマキ: 検索してみましたが、確かに古いですねこれ……。ある意味”相棒”のひとつかもしれないわけなのですね。

tokati0755: 長年いじり倒したソフトですからね。信頼して。まだ現役なのは珍しい事だとは思います。逆にこの雅から完全にメインの編集ソフトを「Premiere」にしたのですが、手に馴染むまで本当に大変でした。ただやはり「AfterEffects」との連動で自由度は桁違いで、使う側の努力した分だけ応えてくれる手強さや面白さがありました。「紙芝居クリエーター」を使用した箇所は今回は台詞枠のみに留めています。

アイハラマキ: なるほど、セリフ部分にのみ紙芝居クリエーターを起用しながらも、通常の立ち絵で会話シーンもそれで全体を作っているかのように似せているわけですね。見事な擬態です。

tokati0755: そうですね。でもPremiereで紙クリのような動きをさせるのって意外と大変で。そこに更なる特殊効果が付くと、やっぱり慣れが必要でしたね。

アイハラマキ: 製作の現場や、過程をみたことがないのでなんともですが、いっぺんそういうのみてみたいですね。どうやって1シーン作るのに至っているのかみたいな。メイキングってやつですね。映画にはつきものの(笑)

tokati0755: 何の驚きも無い、地味極まりない作業です(笑)。思い通りの動きが出るまで、トライアンドエラーですね。大事なのは取り掛かる前に頭で既にその動きが見えている事ですね。何度も繰り返して繰り返して「はいオッケーでーす」みたいな感じです。

アイハラマキ: 「はいオッケーでーす」コーヒーぐび。コーヒーほんとお好きですよね。やっぱり今でも「BOSS」ですか。

tokati0755: 今ハマっているのは「FIRE EXTREME BLEND」ですね。BOSSは「PREMIUM」一択です。

アイハラマキ: 音とのシンクロも魅力の作品ですから、リテイクの数は凄まじそうですね…

tokati0755: そうですね、やはり楽曲へのリスペクトも兼ねて最大限場面展開とシンクロさせるように心掛けています。そのためにコンマ何秒との戦いになった時もあります。




- 最後に作品を振り返って。

アイハラマキ: あっという間でしたが、そろそろお時間が迫ってまいりました。覚えている範囲でかまいません、最もリテイクした場面がどこで、何回繰り返したかとか漠然とありますか?

tokati0755: やはりあっちの世界が見えたのは37話と41話の戦闘シーンですね(笑)。ここは10秒進むために数時間以上作業しました。日々その積み重ねでした。何をどう直したのかはもう記憶にありません。一番作業量が多かったのは43話だったのは間違いないです。描いたイラストの枚数も一番多かったと思いますし。

アイハラマキ: あっちの世界(笑)41話は冒頭凄いですもんね。「vs魂魄妖夢」をフルで活用して、通しですからね。16:9になるのもあそこからですし。

tokati0755: あの楽曲は実に様々な展開が起こるんです。お借りさせて頂ける事になった時は既に頭の中にあの段取りが出来上がっていたんですが、本当に自分に出来るのか不安もありました。このシーンと43話は自分で「映像化不可能」と敢えて銘打って挑みました。妥協を許さない上で自分の技術では明らかに足りないだろう事を死ぬ気で乗り越えないと完結は無いと思いました。

アイハラマキ: ”映像化不可能といわれた”ってくだりも実に映画らしいフレーズだ(笑)

tokati0755: そうですね。無茶な事をしようとしているなあと思いました。

アイハラマキ: 編集中は死に物狂いでしょうから、あのシーンも是非客観的に観てほしいですね、ファンとして。作者本人にこんなこというのおかしなことですが、それでいつか感想を伺いたいものです。ここのシーンだけはみとけよ!って推したいとこ筆頭です。

tokati0755: ありがとうございます。何度観ても恐らく私自身の感想は、「その時のベストを尽くしたなあ」以外には無いと思います。その上でそれぞれのシーンに細かな思い出がある。全ては皆様に届けるためにやった事です。

アイハラマキ: これからも私のほうからちょいちょいレトスペ談義もってくかもしれません。「雅な時間」の更新もいつか終わらせなければならないので。届いたものを今度はこちらが別の形でお届けするターンです。感謝には感謝で。

tokati0755: そうなるととても嬉しく思います。

アイハラマキ: tokatiさんがそういう感想と思い出が優先しちゃうかわりに、こちらが受け取ったことで渡せる感想をみせれたらいいかなーって。あー、そういう捉え方もあるのかってなったら面白いじゃないですか。作者さんには作者さんの、視聴者には視聴者のできること、できなかったこと。まるでアリスのような言い回しですけど、それが全部叶って本当の完結に持っていきたい所存です。

tokati0755: そうですね、創作とはそういうものだと思います。

アイハラマキ: こちらのほうはもうしばらくお待ちくださいね(笑)

tokati0755: はい、こちらは書いて頂けるだけで有り難い身ですので。

アイハラマキ: 締めくくりとなりますが、これまでレトスペ製作やってきたなかで思い入れのある出来事や実体験、面白エピソードなどありましたらお聞かせください。また、tokatiさんのほうから何か他に私に質問とかあればどうぞ。

tokati0755: 数え切れない程ありますが、一番となるのはやはり自分がまさに青天の霹靂という大病を連載中に患った事です。その上で顔も名前も知らない人の温かさと、多くの人が待っていてくれる場所がある事を知り、その方達や友人、家族への心からの感謝を知り、また命や人生について病床で考えました。その時に考えた事が2部以降に反映され、作品は全く違ったものになりました。雅はそれを洗練し、より昇華するものでなければならず、この作品の自分の原点は間違いなくあの体験にあると思います。雅を作ろうと思い至ったのもそういった方達の存在を改めて確認し心に火が点いたからであり、人生には何かそういう思いがけないものが突如舞い込んでくるのだなあと今でも不思議に思います。そしてこれからも無いとは限りません。マキさんへは質問というか、ここまでご視聴頂き未だこの作品を考えたり言及して下さる事への感謝の気持ちしかありません。これはマキさんに限った事ではなく、この記事を興味を持って読んで下さっている方全てに「自分はこんなにも長い間追って頂けて幸せでした」と伝えたいです。その上でまた何かアクションを起こす際にお声掛け頂ければ、今回のように幾らでもお付き合いさせて頂きます。

アイハラマキ: こちらも、ここまでお時間作っていただきありがとうございました。対談とはまた別の形で、「雅な時間」のコンテンツ活用として伺うことがあるかもしれません。何度もお伝えしてきましたが、本当に完結おめでとうございます!!

tokati0755: はい、ありがとうございました!


2016.12.2





8年間以上続いた熱意。募った想いはこれにて終結。
私たちのレトスペ体験は一旦閉幕します。
しかし、作品が残っている以上、
これからもまた新たなレトスペ体験が、
皆さまに平等に訪れることが起きることを願って。


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Next Dream...?



# by makky_cys | 2019-10-30 22:00 | レトスペ雅

-雅と私、レトロスペクティブな時間- 第46回


Makkyです。3部総集編。
初見の方、詳細を知りたい方はコチラへどうぞ → http://cysmakky.exblog.jp/17382733

雅な時間 白 Vol.19 (第3部総集編)_d0284766_23344518.jpg



今回は第3部完結を振り返る総集編。
レトスペ本編そのものを振り返ります。



第一部総集編



第二部総集編









第27話「宵闇」
紅魔館を発ち、目指すのは旅の終着地・白玉楼。
宵闇の森で、史規が見る悪夢。
魔理沙との他愛ないやり取りの中にも滲み出した彼の中に燻る怖れと迷いが、
その足取りを重いものにして行く。




第28話「中有の道」
白玉楼を目前にして差し掛かった「中有の道」。
そこはまるで祭りの場であるかのように喧騒と活気に満ちていた。
気を紛らすかのように一人の少年との邂逅を楽しむ史規だったが、
思わぬ方向へとそれは発展し…。




第29話「呼声」
史規の前に現れた銀髪の少女は、白玉楼からの使者だった。
彼女は史規の中にある迷いを見抜き、このまま白玉楼へ来るべきではないと警告する。
もたらされた更なる事実が伸し掛かる中、史規を連れ去らんとする呼声が木霊し始める…。



第30話「妖夢」
一行に生じた不協和音の隙を突かれ、史規を"帰さん"とする妖怪が襲い掛かる。
その窮地を救ったのは、白玉楼の使者・魂魄妖夢だった。
高まる呼声と死線の中で己の本心に気付いた史規は、
一つの決意を胸にこの道を征く事を改めて妖夢に告げる――。




第31話「幽々子」
白玉楼で一行を待っていたのは、冥界の管理者・西行寺幽々子
物腰柔らかな彼女の饗しを受け、平穏を得たかに思えた矢先、
核心を突く問いが突き付けられる。
彼らは知る。既に終着地へと辿り着いていた事を…。



第32話「破戒」
「今すぐ、祓って見せて」。
無情にも突き付けられたのは、他に選択肢は無いという現実のみ。
介錯の場に引き出された史規は、包み隠さず己の本心を吐露する。
それを受け、還すべき立場に立った霊夢は――。
行動の先にあるのは幻想郷の破戒への”序章”であった。



第33話「霊夢」
幻想抜けという異変を、博麗の巫女が存続を望む…。
霊夢の下した判断は"更なる異変"へと変貌。
それは幻想郷にとって在ってはならないものだった。
世界の意志に感化され大挙して妖怪の群れが押し寄せる中、
三人はそれぞれの決意を確認し合う。



第34話「断絶」
世界を相手取ると決めた霊夢達の前に現れた美しくも強大な妖怪の賢者・八雲紫。
彼女の乱入によって一触即発の事態に陥る中、突如幻想郷が今までにない形で史規に襲い掛かる。
白玉楼、妖怪の賢者、楽園の巫女。
三つ巴の相容れない勢力が幻想郷という舞台で断絶の刃を交わす。



第35話「疎雨」
一触即発、三つ巴の事態を混乱に乗じ脱出した三人。
頼るは闇の奥底から聞こえて来るあの呼声のみ。
一方、幽々子が止まらない事を確認した紫と妖夢もそれぞれの立場を明らかにする。
疎雨の降り始める冷たい夜に思わぬ乱入者が、この異変に再び舞い降りる…。



第36話「宿命」

霊夢達の前に現れた射命丸文。
この異変の規模と危険性を幻想郷の住人として改めて諭すが、
それは霊夢の覚悟を形として引き出すものとなる。
未だ預かり知らぬ異変の手掛かりを求め、彼女は挑む。
博麗の巫女ではなく、博麗霊夢という一人の人間として。
己に課せられた宿命に向き合うために――。



第37話「臨界点」
人間対妖怪、霊夢が臨む初めての真剣勝負が幕を開ける。
賭けるは異変の真相と、他ならぬその命。
覚悟を決めた人間の深淵は、強大な妖怪に届くのか――。
霊夢が今、臨界点を超える。



第38話「永夜」

雨中の激闘を経て、霊夢達は遂に異変の起点へと辿り着く。
そこに隠されていたのは還らぬ輪廻に仕掛けられた不協和音。
永夜の時を経て全ての謎が明らかとなる”今”、
三人は向かうべき終着点とそこで待つ者を知る事となる…。



第39話「誰が為」
暴かれた真実。
決着を付けるべき相手を見出した三人の背に、幻想の淵が容赦無く迫る。
世界が混沌を深める中、其々の思いを貫くべく演者が舞台に舞い降りる。
誰が為に戦うのか――その答は遂に衝突の時を迎える。



第40話「不屈」
現世への道標、西行妖の下で始まる最後の戦い。
一方、魔理沙は幻想の淵を一身に背負った紫の圧倒的な力の前に押されて行く。
その手に残っているのは、ただ不屈の信義のみ。
それが思わぬ形となり絶望の夜を切り開く。



第41話「楽園」
霊夢と妖夢。
月下の空で譲れぬものを懸け激突する二つの「夢」。
史規はこの楽園に繋ぎ止められた魂の叫びを聞く。
熾烈を極める戦いの果てに彼の目に映ったもの、それは――。



第42話「願い」
戦いの果てに、この縛られし輪廻は終わりの時を迎える。
現れるこの異変の裁定者。
どちらかの側に立ち、最後まで目的を果たした者には願いを叶える定め。
それを受け、史規は彼自身の願う唯一つの答えに辿り着く。



第43話「終曲」
”幻想抜け異変”の幻想入り。
全ての願いは今、この場へと集約される。
楽園の巫女はひとり、虚空へと舞い飛ぶ。
解決へと導くための唯一無二の到達点。
今ここに永きに奏でられた戯曲はフィナーレ(終曲)を迎える――。



第44話「あの空の彼方へ」
桜を、待った夢月夜。
願わくば、この世界が楽しく平和であり続けられますように。
あの空の彼方へ、想いは届く。



これまでのまとめ














第3部を振り返る
第2部完結を迎えた2013年の一年後、2014年より再スタートした第3部。
今から換算するともう数年前のことだが、
「シリーズ最終章」ということで皆の期待は最高潮に達していたのも記憶に新しい。
そこから実に2年もの年月を費やし、過ぎ去りし2016年に堂々の最終回を迎えた。
第三部の白玉楼編は、すべての物語の終着点という側面だけでなく、
物語の起点となる「異変の起源」にまでスポットを当てて遡り、
「何故こんなことが起きたのか?」という真の意味での起承転結の「起」をも担当した。
第一部・第二部で追ってきた現在進行形の「幻想抜け異変」だけに留まらず、
新たに「博麗の巫女が起こす異変」が勃発することで、
そのボリュームもこれまでの26話分を凌駕。
実質、第三部の中でも2部編成が行われており、
27話から39話までが新たな謎の露呈と解明、
そして40話から44話の最終回までをクライマックスシーズンとして描く。
シナリオ面だけでなく、登場人物もオールキャスティングとなり、
ビジュアル面において「雅」として開花。
艶やかさや、彩りも真骨頂を迎えた。
戦闘シーンは第2部の「牙城」をも超えるスケールを見事に果たした。
「静」、「動」ともにこれまでの1部・2部を、
文字通り過去のものにしているのは偉業というほかない。
「過去のものにする」とはいってもそれは決して、
1部・2部を無かったものにする(=リセット)という意味ではない。
3部で明かされたことで、今一度1部・2部にも新たな側面が開花したのだ。
いわば「リザレクション」である。
これまで私達がてきた1部・2部でえていたものが、
3部を経て、新たに違ったものがえてくる可視化。
そこにずっとあったにも拘わらず気付けなかったものへの気付き。
その鍵が3部全体に仕組まれていたわけだ。
壮大な仕掛けである。
最終回まで追ってきた者なら、今一度自然に第1話から見直すことだろう。
強くてニューゲームとはまた趣の異なる、
「Re.レトロスペクティブ東方」がそこには既に遺されていたのだ。
こうした作品として語りかけてきた「繰り返される」行為は、
視聴者にとってもギミックとして新たな体験をさせてくれた。
いわば、作者の仕掛けた見事なスペルカード発動といった具合だ。
これは同じくして「かえる」というメッセージ性と、
私たちの認識を「かえる」ギミックにも連鎖として繋がっており、
シナリオ面・演出面の両方でリブート・リビルド以上の記憶に残るものとなった。
どれほどの構成を練ればこれほどのことができるのであろうか。
つくづく一人で膨大な作業に立ち向かい、
一心不乱にその熱量をありったけ魅せつけてくれた作者に感謝の気持ちを送りたい。
やったなぁおい!

この私に「レトロスペクティブ東方はキャラゲー」と言わしめていることから、
当然ながら東方キャラクターの見せ場もそれぞれ余す事なく描かれている。
全体のスポットとしてはいよいよ主人公の霊夢と史規に常時当たっておりながら、
新たに参入する白玉楼の面々、そして本格始動する紫や、射命丸。
やっぱり主人公な魔理沙、裏で動く是非局直庁の動向、
アリスとチルノ、紅魔館組の再来などなど。
場面・時間軸などは違っていながら、
彼女たちがそのときその瞬間に『主役(もしくは同レベルの敵役)』へと昇華する。
正直「ズルい」演出ばかりで、本当においしいとこどりだ。
物語冒頭で綴られたウィリアムシェイクスピアの言葉は、
第3部そのものを指示していたといっても過言ではない。

大団円に幕を終え、
正真正銘のスタッフロールが流れるとき、
この盛大なカタルシスの余韻にぜひ浸かって貰いたい。
素晴らしい映画を見終わったあと、しばらく会場内の席で居座る感覚。
周りは皆席を立っているけど、もうしばらく残っていたい、
作品を堪能していたいという気持ち。
それがこの作品には確かにある。
同じ体験をした方々とまたこうして語らいながら杯を交わしたいものですね(飲めないけど←)。



キャラクターを振り返る
改めてみてみるとすべてのキャラクターは史規という主人公をキッカケに、
この幻想郷という世界の中で生きるという意味、その何かしらを得た。
そのキッカケこそ、彼がこの世界でしっきり生きた証にもなっており、
携わった彼女たちはそれぞれの想いを胸に今日も幻想郷を生きていく。
彼女たちがこの先を歩み続ける以上、彼もまた生き続けていくのだ。
最後はここにスポットをあてて、今一度彼女らの歩みを振り返ってみよう。
※アイハラマキ独自解釈による考察です。決して公式設定・作者公認ではないことを予めご理解ください。


博麗霊夢
これまでの彼女は異変解決という名目上、「妖怪退治」さえできればそれがなんとなく果たせる、
そして異変解決したあとも「これまでどおり」がやってくると楽観的に昼行灯な考えで過ごしてきた。
彼女が持つ「天賦の才、絶対的な勘」がそれらを可能にしていたこと。
異変を企てる者が大概力を持った妖怪や神々であったことから、
スペルカードルールにのっとり半ば強制的に異変解決へと導いてきた。
此度の異変はそのどちらでもなかったことではじめて彼女自身が、「博麗」という名の意味、
「楽園の巫女」という肩書の重みを痛感することとなる。
相手は普通の人間で、ましてや生まれてすらいない魂であり、
ただ帰りたいと願うだけの存在。
巫女の務めとして祓うことは容易いが、
それによりこれまで過ごしてきた日常は決してかえってこないという皮肉。
この状況に、一人の少女として年相応の悩み・葛藤を抱えることとなった。
「力」だけならば到底及ばないちっぽけな存在である史規の生き方はそれらと向き合わなければならないほどに、
大きく背負いきらなければならないものへと変貌していた。
そんな彼女の幻想郷における重要さを伝えてくれたのが、
これまた退治する側の妖怪に指摘されたという皮肉な事実。
察するに複雑という言葉だけでは到底収まらないほど追い詰められたことだろう。
そんな彼女を救ってくれたのが他ならぬ異変そのものであり、
ちっぽけな魂である史規の決して揺るがない頑なな意志。
支えなければいけない相手から支えられたことを知り、
彼女はまたひとつ成長する。
絶対的強さの裏に隠れた弱さを克服した彼女は、
これまで以上に「博麗の巫女」として己を認め、その在り方とともに強く生きていく。
そこが髪を切る行為にも繋がってくる。
これは女性として、そして巫女としての二つの意味を持っている。
ひとつは決意の表れ、そして心機一転のため。あとちょっぴりだけの少女失恋模様。
何度も自分に言い聞かせたものの、どうにも納得のいかない別れ方で幕を閉じた此度の異変。
「博麗の巫女」として身を投じることを決意表明したこと、
その厄落としのための禊としての儀式。
この世界で信じ続けることが、
今は居なくなってしまった彼といつか過ごした日常がまた巡りかえってくることに繋がると願って。
彼女の断髪という決意は「またここから始めるために」というメッセージ性も伝わってくるのだ。
一握りのご縁を投じて巫女はあの空の彼方へと今日もまた飛んでいく。


霧雨魔理沙
自分が何故霊夢とともに異変解決へと旅立つのか。
それは決して「世界を護る」という大義めいたことではなく、
異変解決もいってしまえば彼女たちからしてみれば日常の一部。
面白半分、暇半分というのもあっただろう。
もちろん異変解決すればそれだけ彼女に恩恵がもたらされた。
好奇心旺盛・研究熱心な彼女にとって未知なる相手との邂逅は、魅知なる旅。
新たな技・新たな能力との出会いは小さな魔法使いにとって非常に有意義なもの。
そして天才肌の霊夢にいつか挑戦したい、自らの力を誇示してみたいという欲求。
誰よりも頑張り屋さんで努力の結晶である彼女にとって、
その「成果」を見せつける場として異変解決は恰好の場所だった。
しかし、それすらも本当は建前ですらない。
自分自身も気付かずに、無意識レベルで便乗していた異変解決への旅は、
何よりも誰よりも優先して「友である霊夢のため」であったと気付く。
霊夢のためになるから史規の幻想抜け異変を手伝う、史規を助けたら霊夢のためになる。
そんな単純明快な行動理念はいつしか、
良い奴だった史規という新たな友との別れを予感させていく。
異変を解決するには史規の消滅が絶対必要条件であると悟ったとき、
それははたして霊夢のためになるのであろうか?
魔理沙もまた我武者羅に異変解決してきたからこそ、
「誰かをやっつければいい」という手段以外の突破口を探す道に悪戦苦闘する。
誰も悲しませてはいけない。
だからこそ常に笑顔で立ち振る舞うことを決めた魔理沙は、
水臭いのは一切なしにして、自然に彼とまた再会する口実を作る。
それが史規が射的屋で手に入れたのびーるアームだ。
言葉でなく、形あるモノとして確かに残し「借りた」約束を取る行為は、
いつか絶対「かえす」という意志表示。
最終局面では、ついに「世界を護る」という役目にまで自分を奮い立たせ、
霊夢がどんな想いでこれまで異変解決にのぞんできたのかを痛感する。
そして、ついに言葉やモノではなく、行動として彼との約束を光として幻想の果てまで届かせたのだ。
小さな小さな少女の願いは大きな大きな魔法となって。


魂魄妖夢
従者として主人の描いた壮大な企てへの大きな期待と同時に抱く畏怖と危険性、
そして庭師として霊夢たちへの導き。
さらに自身の思惑と、様々な困惑が板挟みとなって彼女を常に迷わせる。
「迷いを断ち切る」という白楼剣を使う本人こそが最も迷いの渦中にいるという皮肉と、
そこから真の覚悟に至るまでのプロセスを白玉楼編では描かれた。
半人半霊という己の在り方は史規という寄る辺ない魂とフィーリングを感じ、
彼の生き様を目の当たりにしてその責任までを背負うよう奮闘する。
「誰かを守る」というこれまでの手枷を外し、
「未来永劫幽々子と共に在りたい」という愚直ともいえる痛烈な魂の叫びは、
彼女のこれまで生きてきた最大限のカタルシスといえよう。
霊夢の描く夢、妖夢の描く夢というふたつの夢の衝突は白玉楼編の見所のひとつとしても成立している。
初登場から最終回まで一度も見せることのなかった彼女の屈託のない笑顔は、
彼女が思い描く「いつもどおり」が帰ってきたことを示す。
異変を企てたという罰を背負ってはいるものの、
自分にとって最も大きい存在である幽々子がただそこに居るという事実。
無事に帰ってきたという現実を今は噛みしめ、この先の未来を見据える。
結果的にこの異変は彼女にとっての大きな一歩であり、試練となった。
それは半人半霊がゆえに半人前だった彼女が一人前になるための試練。
己の迷いもろとも打消し余り無く斬り果せたのだから。


西行寺幽々子
今回の異変の黒幕というより全ての首謀者。
異変を起こした張本人ではなく、異変が起こるように仕掛けた。
だがそれは決して悪意によるものではないことを前述しておこう。
そのあまりにも長い年月をかけて企てられた用意周到さと、
飄々としていながら真意を外に決して漏らさない、
抜群の頭脳は常人には決して察することはできない。
事実、従者である妖夢や是非局直庁を相手にしていながらも、
悟られずに立ち回ってみせたほど。
おおむねの思惑はこちらで考察済みなので省かせていただく。
そのキッカケとなったのは自身が亡霊でありながら彷徨わないこと。
自分が彷徨わないのに、
彷徨い続ける魂がこの世にはまだ数えきれないほどあることに気付いたため。
そのひとつに史規というかえりたがる魂の存在に触れたからなのだが、
「彼だけを」特別扱いすることは管理人として到底許諾することはできないがゆえに、
行動を起こしたのだろうか。
彼女自身、生前の記憶は持ち合わせていないのだが、
生者だった昔と死者となってからの今の両面において世界を愛した彼女の思想は、
拒まれて尚強く誇示してみせた。
その傍らにいたのが親友である紫の恩義あってこそである。
人間も妖怪も神々も平等に暮せていけるこの幻想郷において、
死者もまた平等であってほしいという切実な願い。
親友の創った世界ならば、その世界をもっと素敵なものにできるだろうという願い。
改変という異変は「いつもどおり」霊夢の手により阻止されたが、
やり方こそ世界にリスクを背負わせ、皆にも迷惑をかけたとして咎められる一方、
此度の思想そのものは是非局直庁にも黒と審決されていながらも、
罰そのものは情状酌量の余地ありとして極秘に白と認められたのだった。
(黒と審決されたのは無益な批判を食い止めるため。形式としての黒)。
とはいえ、1か月間断食の刑は食を嗜む彼女にとって、
過酷ともいえる生き地獄となりそう…。
引き続き冥界の管理人としての責務を全うすることを誓い、
死にながらにしてこれからの日常を面白おかしく生きていく。
お菓子は食っていけない。


射命丸文
幻想郷に長くいる最古参であること、
人間と真逆に位置する妖怪側であること、
そして妖怪の中でも上位である天狗であることを踏まえつつも、
人間寄りに自身を置く彼女は、
ジャーナリズムという肩書を理由に、
博麗の巫女の動向を監視をしていたと睨む。
強大な妖怪であるがゆえに、
この世界の人間とのバランス加減の重要さを熟知しており、
そのためには彼女なりの「直撃インタビュー」もものともしない。
実のところ今回の登場キャラクターの中では、
まだまだ未知なる部分が多いキャラクターのひとりで、
その掴みづらさは幽々子ともひけをとらない。
この異変の起源を知っている素振りをみせ、
「バグチェッカー」としては霊夢や紫以上の優秀さを連想させる。
自身が強大な妖怪でいられるためには人間は必要不可欠であり、
仮に妖怪だけの世界になってしまったら自分たちの勢力は途端に下落してしまうだろう。
そんな社会の縮図そのものを彼女は既に察しており、
この今の状態がちょうど良いと認めているのだ。
幽々子とは違い世界というよりその中の社会に着目しているのが彼女といった具合だ。
平等の中にも上下や格差があって当然という考え方というか、
平等実現のためには実質的に上下や格差が生じなければ成立しないという、
いささかドライな考え方といったほうがしっくりくるかな。
これらはすべて憶測だが、幽々子の謀りを察知し、
その動向を追っていく上で絶対防衛ラインの博麗の巫女がどう打って出るのか。
そんな彼女にとっての特大スキャンダラスを作ってくれそうだったのが史規という魂だ。
霊夢を追うだけでなく、この魂を追い続けることも彼女にとって有意義だという確信。
故に何か二人に変化があったとき、誰よりも迅速にそこに突撃ができた。
時には援助し、時には諭し、時には雌雄を決し。
中立でないからこそ中立のような立ち振る舞いは彼女ならではの狡猾さが滲み出ていたかのよう。
結果的に異変は丸く収まり、何事もなく「いつもどおり」がかえってきた彼女にとって、
あのとき霊夢と全力でぶつかった思い出はいつまでも残り続けていく。
改めて博麗の巫女という存在意義のありがたさ、強かさをその身を持って再認識できたことは大きい。
霊夢を、博麗の巫女として在り続けさせるのは問題ないという安心感。
幻想郷の真実を未練なく天狗の手帖に記録として遺して。


八雲紫
キッカケは親友(幽々子)の謀りを知ったときから。
生前より知る幽々子の願いをはじめて聞いたとき、さぞ紫には刺さったことであろう。
過去に生と死という境界で一度袂を別つこととなった親友が、
死のあとも再びまた世界のことを想ってくれたという事実。
幽々子の願う改革に危険と知りながらも駒として立ち振る舞ったのは親友のため、
そして紫もまた幻想郷のためを想ったにすぎない。
世界を愛するというただ一点のみのため、
そこに在る住人全てに対して平等に重みを、深みを真っ向からぶつける覚悟と意志。
史規という魂が異変の火種になると知りながらも、幽々子のために裏で全て誘導し、
願い成就の一歩前まで導く。
しかしながら計算高い紫を持ってしても、
その異変本人が誤りを正す道を示していたことは想定外であった。
レミリアをはじめとする幻想郷に移住してきた者たちからの反発と、
幻想郷愛を目の当たりにし、もう一人の友である霊夢もまた、
やはりこの幻想郷において必要なのだという悟り。
そして導いていたはずが、自分自身もまた導かれていたという気付き。
異変自らが示した道標に従い、霊夢と魔理沙は見事彼女の驕りに打ち勝ったのだ。
世界を創っておきながら、その世界の「いつもどおり」を維持することの難しさを紫は知る。
それは決して誰にも知られず、誰にも悟られないままの悦びでもって。
これからも日常と非日常の境界を彼女は繰り返し行き来する。


四季映姫・ヤマザナドゥ
小野塚小町
全容を常に見定めていた是非局直庁は、
此度の異変に際してあらゆる提案を施してきた。
「世界を変える」という大それた企てを前にして、幻想郷の住人はいかなる行動を起こすのだろうか。
そのために「かえす」「かえさない」を各々に自由に決めさせ、
何かしら異変を解決させた証には願いを叶えるという条件付きにまでしていたのは、
それだけ「いつもの異変」とは違うことを示唆していた。
予めルールを設けて伝えるということは中立であり、不公平さをなくすためであることと、
住人達の嘘偽りない本音を曝け出すことに一躍かうためである。
四季映姫は白黒ハッキリつけるという能力を持っているがゆえに今の役職になったのか、
あとから白黒ハッキリつける能力が身についたのかはさだかではないが、
異変解決を見届けたあとの彼女の笑顔は、
この異変を通じて皆の真剣さをしっかりと知ることができたことの満足感からか、
それとも白黒つけるだけでは見えてこないものの、
価値を見出せることができたことへの安堵感から来るものなのかはわからない。
四季映姫のみぞ知る真実ではあるが、
それを部下の前でも曝け出すというのはあながち映姫本人の少女としての素が垣間見えた瞬間といえよう。

サボマイスターなどと呼ばれているが、小町は仕事ができるタイプだと私は思っている。
効率よくサボるためにどう仕事をこなせばいいのか、その下地を作るためにはどう頑張ればいいのか。
あとの仕事が楽になることを優先し、今は苦労してもいいという考えの持ち主。
それは常に先を見据えているとも取れ、世界の改革においても職を失わずに済んだとホっとしている。
このことからただの堕落者ではない。何なら仕事したくないわけでもない。
「仕事をする上で」が根本と前提にあるからだ。
輪廻転生の環がなくなれば自ずと冥界と三途、そして地獄の仕組みも大きく変わるだろうし、
それにより自分の立場が新たに変わるかもしれないと内心危惧していた。
仕事ができるタイプだといったのは、
それは小町自身が今の仕事にちゃんとやりがいを感じているからと推測できるからだ。
良い上司に恵まれ、人と話すのが好きな彼女にとって三途の水先案内人で船頭をやっていること、
死神というポジションから様々な魂と触れ合うことができるのは性に合っている。
仕事とプライベート、そして世界に対しての自分の在り方を実はすごくよく理解していて、
その距離感をも掴めているのではないか、というのが小町の魅力だ。
自分が叱られるためには効率よくサボらなければならない。
叱られるということは直属の上司である四季映姫に、
しばしば現場へ来させる必要がある。そのために小町は叱られ役を買って出る。
上司が現場に来てくれたら、自然な流れで現場の状況を生でみて貰える。
報告や連絡ではなく、本人が直にそれを目の当たりにしたのなら幻想郷界隈の色んな事情がわかるから。
此度の異変のそもそものキッカケは繰り返しかえろうとする魂がいるという発見によるものだった。
作中では語られていないが、その魂を最初に発見したのは案外小町の報告によるものだったのかもしれない。
仕事と私事で白黒つけた日常を過ごすのも彼女たちには必要経費なのかも。


十六夜咲夜
果たせることのできなかった史規の最期を今度こそ見届け、
彼との約束を胸に生きていくことを誓った咲夜。
かつて名前すらなく迷い込んだ魂の成れの果て。
魔族であるレミリアに救われたのち、メイドとして雇われの日々を過ごしてきた。
「一人じゃない」と声の届かない史規に放ったのも、
過去に自分が一人であったことを想起させるセリフ。
名が与えられる前の咲夜は生きていながら、死と同然の生活を送っていたに違いない。
人間でありながら人間らしさをまだまだ知らない彼女にとって、
人としての脆さ、弱さ、そして強かさを教えてくれた史規には慕い以上の想いが芽生えていっただろう。
どこか浮世離れしていた咲夜にとって、今一度この幻想郷で与えられた「生きる」意味を知る。
それは紅魔館のメイド長という肩書でもなく、
主人であるレミリアへの服従や依存でもなく、
「十六夜咲夜」という一人の少女としての個を保つこと。
彼女もまた霊夢とは違う視点で自分と自身の在り方を見極めることができたのだ。
彼との思い出は「過去」として受け取り、
「現在」在る自分を認めていく。
有限の時の中で彼女の生は「未来」を止まらずに歩んでいく。


レミリア・スカーレット
この異変を通じて彼女が得たもの。
それは咲夜と史規という二人の人間によるレミリア本人への救済と安住である。
彼女からしてみれば人間というのは実にちっぽけな存在であろう。
しかしながら、その人間のために自らの行動や理念を働かせている現実。
過去に霊夢や魔理沙という人間に負けた経験のある彼女にとっては、
人間の言いなりになるのはとても度し難いこととなるのだが、
高貴な吸血鬼であるがゆえに、その人間を認めることで主としてのカリスマが保たれている。
咲夜の器量を見抜いてか、それともただの余興だったのかは当時の真意はわからないが、
名もなき少女を拾ったときからそれは大切なモノへと確立していった。
まるで自分の娘のように扱う姿勢は紛れもない家族愛。
愛ゆえに人間の愛し方がまだわからないことへの劣等感。
人間はすぐに壊れてしまうから、「扱い方」がわからない。
そのわからないことを学ばせてくれたのがやはり同じ人間の史規だった。
人間も妖怪も平等に認めてくれている幻想郷に来て、
レミリアはこの世界そのものを愛するようになる。
紫からすればまだまだ余所者かもしれないが、
余所者にすら好かれる世界になったことを認めさせる彼女のカリスマ性は、
またも人間の魔理沙を救うことになる。
色々と人間に貸しばっかりになってしまったが、
それでも自分を卑下せず満更でもない顔で、この世界を嗜んでいく。
運命は決して特別なものではない。いつもとかわらない日常の中に潜んでいるのだ。


パチュリー・ノーレッジ
小悪魔
知ることに重みを置く彼女がどうしてもできなかったこと。
それは知己であるレミリアの暴走を止められなかったこと。
そんなレミリアを救済してくれたのが史規という存在である。
もとは咲夜のため、そしてそれがレミリアのためになると助力し尽してきたが、
繰り返しはまたも「繰り返しで終わってしまう」と危ぶんだ。
その終わらせ方はどう考慮しても、史規という魂自身が気付いてくれなければいけない。
先へ進むためには知って貰わなければいけない。
だが、ただ教えるだけでは意味がないという苦悩。
そのために彼女なりに導き出した方法が手記だ。
あくまでも知識というヒントだけは提供するが、
それは自分自身がどこまで気付くかがカギとなっている。
パチュリーの思惑どおりだったかどうかはわからないが、
とにかく今回の史規が己自身でそこに気付いて貰えたこと、
そしてその答えが史規自身のためを願ってのことでなく、
レミリアと咲夜のことを想っての選択であったことに感銘を覚える。
そんな彼の頼みを手紙として受け取ったからこそ、
彼の変化に便乗し、彼女もまた一人で抱えることをやめた。
これまで一人で考え、一人で自己解決していた彼女にとって「皆に知って貰う」ことは大きな一歩。
それだけ彼からも色々なことを学び、
自分の知らない外の世界の記憶を興味深く知識に蓄えていった。
幻想郷の中の、紅魔館の中の、図書館の中にポツンといるパチュリーにとって、
幻想郷外の情報というのは実に刺激的であったに違いない。
表情には出さないが、
史規の消失というのは咲夜の気遣いからしてパチュリーも心においてはかなりダメージを負っていたのかも。
しかし安心してほしい。
彼の記憶は彼女の知識となってこれからも決して忘れ去られることはないのだから。

異変の渦中、置いてけぼりを食らったパチュリー一筋の小悪魔にとって、
史規という存在はただ邪魔な奴程度にしか思っていなかっただろう。
しかしながらネガティブをもポジティブにかえる彼女からしてみれば、
これすらも恰好のチャンスと捉えてしまった。
すっかり朝食を作ることを覚えてしまい、
紅魔館の新たな日常を実装してしまったのだ。
レミリアやパチュリーがそれを赦していることは、食事の味は満更でもないのだろう。
咲夜が作っていた食事に負けるとも劣らないのは正直凄い。
だが、紅茶だけは咲夜の淹れた味が良いようで、
変わった中でも変わらないものとして紅魔館の日常は今日も和やかだ。


紅美鈴
異変を経て、自分が何を護るべきなのか。
その見解を出し切れたキッカケになった。
紅魔館の門番なのだから、文字通りそこさえ守ればいいと考えていた彼女は、
その優しい性格が仇となったのか、これまで危機感があまりなかった。
しかし、世界を相手とるという状況を実際に目の当たりにし、
そして主人が前線に立つという光景を見て、その甘い考えはかわっていく。
護りたいという想いはそのままに、その規模は桁違いにかわったのだ。
紅魔館を護るということは即ち、主人だけに限らず皆を護ること。
皆を護ることは即ち、世界を護ること。
美鈴の心がけは幻想郷の神である龍神と同じ境地へと至ったのだ。
勝ち負けの問題ではない、挑むか挑まないかの問題。
勝てないからと普段は逃げていた彼女は、
負けるとわかってはいても挑み続けなければならないときはやってくるということを、
言葉でなく心で理解し、同時に主人の言葉に身に染みたのだ。
今回の一件で褒美となったのかどうかはさておき、
今まで門番としてはぶられていた彼女も、
紅魔館の大切な一員として皆と共に食事をいただける時間を与えられた。
紅い館ではしばしば美しい鈴の音が聴こえるという。


チルノ
大妖精
本人たちがどこまで気付いているかわからないが、
妖精はつまるところ幻想郷の自然が生み出した存在である。
今回の異変で幻想郷そのものが変化してしまうおそれからと、
是非曲直庁やアリスの誘導によって、半ば本能的に行動を取っていたペアではあるが、
彼女たちの意図せぬところで、変化は訪れた。
それは人間たちにとっての救世主となったこと。
幻想郷の脅威となって人里には決して踏み入れない妖怪たちの侵攻を彼女たちは、
必死で止めにかかったことは、人里からすればのちの恩義に繋がる。
理由はどうあれ、普段はイタズラ好きで厄介者だった妖精たちにも陽の目を浴びせられるようになったのは、
今後の人間と妖精のバランスを保つのにもうってつけなのだ。
何故自分たちがヨイショされるのかはいまいち理解しないままこれからも普段の日常がかえってくるだろうが、
いつか気付く日がやってくるだろう。
それだけ幻想郷を大好きであることが誇りに繋がることを。
無邪気は最強なのだ。


アリス・マーガトロイド
霊夢や咲夜が知るよりも前から史規という魂と邂逅し、
そして幻想抜け異変に一度挑戦したことが明らかとなった。
何故彼女が史規に対して詳しく素性を知っているのか、
何故霊夢に対して激しくけしかけてくるのか。
幻想抜けという異変の過酷さと熾烈さを最初でありながら強大な相手として描かれていたのも、
その先にある真実のフィナーレを誰よりも期待していたから他ならない。
それがアリスにとって魔法使いになるキッカケとなったのか、
それとも自分の限界を嫌でも思い知ってしまったからなのか、
不明点はまだまだ多いが、それほどの熱量をぶつけるに値する何かがあったに違いない。
今とはまた違う史規のことを「忘れない」ために作った自作人形に別れを告げる彼女は、
どれほど待ち続け、どれほど耐え続けたのだろうか。
決して表に出さない彼女だけの物語はいつか語られる日がやってくるのだろうか。
まずは、視聴者おもいおもいの独自アリスストーリーを思い描いてみてほしい。
明確な敵として対峙すると立場を決めた彼女も、
本来はこんな悪役じゃないこともしっかりと読み取れる。
敵として徹底するためには、それだけ史規を、そして霊夢を信じたから。
彼らを信じる自分自身を信じたから。
信じた上で決闘に負けたあとは、今度は彼らの道を示さなければならない。
異変の先にある真の異変が及ぼす幻想郷への影響を見知り、
ツケを少しでも返上するためチルノとともに人里を護る。
世界を信じた紫や幽々子とは違って、
人として霊夢らを信じた彼女の熱意はもはや魔理沙すら超える。
そのためには本気でぶつからなければ意味がない。
いつもつるんでいるからと甘えてはいけない。
そのときの彼女の心の痛みをしっかりと理解し、
今一度第一部を観るといいだろう。
誰よりも人間らしい魔法使いがそこに居続けたのだから。





桜を、待った夢月夜
(11月4日更新予定)
※真の最終回がこいつだ!!



# by makky_cys | 2019-10-30 22:00 | レトスペ雅
-雅と私、レトロスペクティブな時間- Another⑥ Part.1

雅な時間 Another⑥ (対談企画 - 完結編) Part.1_d0284766_14060644.jpg

「雅な時間」最終回
其の壱


本編最終回を迎え、第一話公開日である12月2日に丁度また対談を組むことができました。
思えばこれまでの対談企画も12月2日前後でしたね。
引き寄せは繰り返し通じ合う。
終わったことで今回は色々語られてこなかった胸の内や、設定裏の一部分が明かされていくと思います。
「雅の時間」だからこそ実現できた濃厚インタビューをどうぞお楽しみください。

※対談中は「レトロスペクティブ東方」内で器用された楽曲を流しながら行われました。
※対談そのものは2016年12月2日に収録されたものです。


過去の対談はコチラ









- 本編完結を迎えて。

アイハラマキ: 本日はよろしくお願い致します。かれこれ、対談も通算で4回目…ですか。それぞれの節目で時間を作ってくださり感謝です。

tokati0755: よろしくお願いいたします。ここまで追っていただき、”こちらこそ”です。

アイハラマキ: 本日はいつも以上にリラックスしていただいて、色々語っていただけたらなーと思ってます!これまでの対談は合間合間とはいえ製作途中でしたからね。無事に終わってはじめて何もない状態ってワケですが……いかがですか、今の心境は。

tokati0755: 達成感で満ち溢れている…というよりも、兎に角先に疲労感の方が勝っていますね。終わったという実感はありますが、だからこそ作業に打ち込む事で誤魔化していたようなものが後から押し寄せてきてまだ抜け切れていない感じだというのが正直な所です。

アイハラマキ: 最終回からしばらく経ちましたが、まだ疲れが抜けきれてないって感じですか。4年分の想いですから、しばらく続きそうですよねそういう疲労感。何か気晴らしや息抜きになるものなど、tokatiさんなら映画鑑賞とかそういうので徐々に日常を取り戻していく感じになるのでしょうか?

tokati0755: そうですね、疲れというのとはちょっと違うんだと思います。それだけ自分を削ぎ落としていたという事に気付いた、という感覚が近いですね。だから休めば回復するのとはまた違うんだと思います。これからそれを別の何かで埋める事が必要なのかも知れないと思っています。映画もレトスペの制作も自分の日常の一部でしたから。映画は勿論より多く観れるようになるでしょうけど、だからと言って無理に観ても仕方ないですし。全く新しい何かが良いのだと思います。

アイハラマキ: レトスペ自体がもはや”映画”みたいな作品になりましたもんね!こちらも追い続けて、クライマックスシーズンにはほんと刺激を貰いました。「終わったー!」って気持ちと同じくらいに「終わっちゃった…」っていう余韻も同時に襲ってきて…満足感と物足りない感がありますw 贅沢な気持ちかもしれませんが。ファンとしてこういうの言うのもアレですが、ほんとよく作ってくださいました。ありがとうございます。

tokati0755: 映画らしい作品って仰って頂きましたが。「映画らしさ」って何?と改めて聞かれると自分でも今まで触れてきた映画体験の集約としか言えないんですけども。結局は自分という人間が最も至福の時を目指さざるを得ないわけです。長い映像体験の先でスタッフロールが流れてきた時席を立たずに暗い劇場で何かを暫く噛み締めている時に、それを感じます。そのための布石こそが、映画らしさなんじゃないかって思うんです。だから自然と自分もそれを目指して行ったんでしょうね。

アイハラマキ: なるほどー。私もあの作品を愉しむために部屋暗くしたり、ヘッドフォンつけたりで観る、聴くのに集中してたんですよ。ですので、最期のスタッフロール観終わったあと映画館の映画観終わったようにしばらくPCの前で余韻に浸ってしまいました。さっき話した物足りなさとか、終わってしまう寂しさとは別の要因で、これまでのハナシを振り返ったり、あのあとの物語は果たしてあるのだろうか?とか「終わり」なんだけど、レトスペはまたここから「始まる」んだなぁって。そういう余韻ですね。

tokati0755: それは完結後にすぐ伝えて頂いたお言葉ですね。ありがとうございます。PCとディスプレイがあれば擬似的に劇場のような状態に出来ますからね。マキさんにはプライベートで何度か次回は暗くしてご覧頂ければと言った事がありますが、言わなくても自然とそうしたくなる雰囲気作りというか、そういうものを常に目指しておりました。

アイハラマキ: 映画らしさに、tokatiさんも”映画体験”って表現をされてましたが、あの作品は幻想入りってテーマを題材にフミノリ視点で描かれたからこそ、日常ではない非日常を二重の意味で感じることができましたし、東方二次創作でありながら、そのカテゴリを飛び越えて映像作品としていつしか追っかけていくようになってました。好きな東方二次作品は他にも数あれど、レトスペ体験ができるのは、やはりレトスペでしかありえないんです。そのへんをひっくるめて「映画的」なんですよ!東方のキャラがしっかりあの作品のキャストだったなーって。2話の冒頭にあったシェイクスピアの言葉が、こうして終演してまた改めてしっくり来る演出にニヤリときました。

tokati0755: そうですね。雅のコンセプトの一つに当時出来なかった映像演出にとことん拘る、というのがありました。制作を経るにつれ出来る事も増えてどんどん作業量が増えて行ったんですけれども、そこが一番難しさを感じました。どこまでやるのか、きりがないからこの辺でもういいだろう、とするのか。……そういう状態になったのはCSのあたりからだったんですけど、結果的にはとことんまでやりました。作者が息切れをしてしまう最大の要因の一つであることは周知の事実ですし、大変危険な事でしたが、結局その時出来るのに素通りした部分が残ってしまうと「雅」としてもう一度リビルド作品として作っている意味が無くなってしまうと思いました。

アイハラマキ: CSのキャッチコピーに「必ず帰る。全ての答えと共に」って今にして思えばtokatiさん自身の作品に対する想いも含まれていたのかもしれませんね!

tokati0755: そうなのでしょうか。私はそんな堂々とした台詞恥ずかしくて言えませんが(笑)!



- ラストエピソードについて。

アイハラマキ: レトスペを語る上で、シナリオ構成は外せないんですが、本編シナリオが一番先に出来上がったということで、44話全部繋がって気持ちのいい作品になりました。製作途中で路線変更とかそういうものってあったんでしょうか? それとも、ズバリ当初のプロットのまま着地したのでしょうか?

tokati0755: そうですね…「雅」というのは、シナリオ面で無印において自分の中で引っ掛かりがあったりした部分と、何よりもここを色鮮やかにしたらもっとテーマが伝わるのではないだろうか、という部分の洗い出しからスタートしました。そういう意味合いも込めた「雅」なわけです。ですので、路線変更はありませんでしたね。変える事が怖かったという部分はありましたが、それも含めてどうしてそうしたのか、を自分の中で消化出来ていたのでプロット通りに進みました。最後のシーンを除いては。

アイハラマキ: 最後のシーンというのは具体的にはどこの部分ですか? 44話前半? スタッフロール後?

tokati0755: スタッフロール後の一幕ですね。

アイハラマキ: あぁ、あそこの。初見は驚きました。あー、なるほどそういう終わり方するかー!って。

tokati0755: あのシーンに関しては、実は無印のラストに入れようと思って書いたくだりです。しかし当時、どうしても入れられなかった。自然に浮かんできたラストシーンなのに、これを入れるだけのものを積み重ねられなかったという感覚がありました。「雅」においても全く入れるつもりは無かったというか、ふと最終回のスタッフロールを作っている時に思い出して。とりあえず動画にしてしまって、あとは自分の胸に聞いてみろって感じで通しで観ました。結果、自分に対して今度は入れてもいいだろう、と言えたので取り入れる判断をくだしました。

アイハラマキ: あーいう演出に弱いんですよ。まだある!ってサプライズと、ちょっと含んだ表現で正解はみんなに任せるよっていうやつ。今回あの追加シーンのおかげで、「雅」は何度も観たくなる最終回を迎えられたって印象が強いですね。さー、もう一周するかーって(笑)「いつか、また会える」ってセリフも嬉しかったです。別れだけど、再会できるんだろうなーって期待感と、レトスペって作品にいつでも会いにこれるよって二重の意味になってて。私はそう受け取りましたもん。

tokati0755: 勿論作者としてあのシーンの答えは明示しませんし、何もかもをここまでお付き合い頂けた方へ委ねる形です。もし本当に彼なのだとしたら、では何故?というあらゆる可能性へ思いを巡らせて下さるかもしれない。そしてこの後どうなる?という空想へと。やはりそこには、自分が幼少期に体験したADVゲームの記憶が強くあるんですよね。何もかも全て片付いた作品はあまり思い出す事は無いけれど、エンディングからの物語を空想したくなる作品が今でもずっと印象に残っていく。でもレトロが最初からその着地点を目指していたわけではないのは前述の通りでして、こうして8年かけて「余地」を残しても良いんだと。ようやく自分の手を離れたんだな、という事なんだと思います。「いつかまた、会える」はそうですね、まさにそういったあらゆる余地へと繋がるシンプルな言葉だと思って、絶対にこれを言う事!と書き留めていました。

アイハラマキ: 私がレトスペを追っかけることになった最大の理由がレトスペ無印の消失だったので、それからほんと色々あってtokatiさんと出会えて、レトスペとも雅で再会できて、そして今度は一緒に完結を迎えることができたってのがもうホント言葉で言い表せないくらいに感慨深くて。その最終回であのセリフはさすがに涙腺にキましたね。tokatiさんの「作品で語る」がようやく報われたといいましょうか。出会えて良かったなーと。これがまた奇しくもフミノリと霊夢がようやく出会えたって流れと似てて、感情移入もひとしおなんです!偶然でしょうけど、狙ってやったんですか?(笑)

tokati0755: いえ、狙ったとまでは言い過ぎです(笑)。ただ雅に相応しい展開・台詞を選んだ結果です。ただ雅が「レトロスペクティブ東方」として残る最終型となったのは事実ですから、自分としては本当の意味で「また会える」わけで、そういうニュアンスは含まれているかもしれません。正直、編集時に何回も繰り返し再生しているのでしっかりニコニコ動画上で自分の動画を観たことが無いんです。いつか改めて観てみたいです。皆様のコメントも併せて読めて、それがいつでも出来るわけですから。有り難い事です。

アイハラマキ: さきほど、製作も含めて日常の一環だから代わりになるような穴埋めができればと仰っておりましたが、作者としてレトスペを眺めるんじゃなくて、客観的にレトスペを観てみるのはいいかもしれませんね。まっさらの状態で誰かが作ったとある作品ってくらい開き直って私らと一緒の視線で観れたら、ふと「これ自分が作ったんだよな…」ってなるかもしれません(笑)また違った価値観でレトスペと向き合える状態になったと考えたら愉しいかもです!

tokati0755: そうですよね。作って置きながら密かな楽しみです(笑)。今まではチェックする、という視点でばかり観ていましたからね。

アイハラマキ: 私も散々観てますが、そういうふうに観れるのは羨ましいです(笑) そして、作者とファンっていう間柄を飛び越えて、レトスペ好き同士の語らいができたらなーとさえ思っています。これがレトスペっていう作品の連載こそ終わったけど、レトスペって作品をとっかかりに新しいコミュニケーションのはじまりだなぁと。凄く実感できます。

tokati0755: ありがとうございます。この作品で描かれたのは長い長い物語のほんの一部分ですからね。更にほぼ一人称だったこともありやはり終わっていながら「余地」があります。そういったものを是非ともいい意味で好き勝手にお伝え頂けたらこちらもとても嬉しいですね。

アイハラマキ: こちらこそ、tokatiさんとはレトスペの枠を超えて他の分野でも語り相手にさせてもらってますからね。喜ばしいことです(⌒∇⌒)

tokati0755: 明らかに年代が同じなのでそこは大きいですよね(笑)。こちらこそありがとうございます。



- アリスエピソードの「余地」。

アイハラマキ: さきほど、シナリオプロットはほぼ想定どおり着地できたということで、最終回のアリスに対する扱いも相当前から出来ていたってことですか?

tokati0755: そうですね、アリスについては絶対にフォローが必要だと思っていました。これは無印の脚本の洗い出しで真っ先に出た課題でした。視聴して頂いている方の一人から「アリスのバックグラウンドがちゃんとフォローされるのか気になる」とお伝え頂いた事があって、やはり力を入れなければと強く思った部分です。それが「誰が為」や最終話に繋がって行った感じですね。その中で限りなくアリスらしさを求めるには、という切り口で考えて行きました。

アイハラマキ: 追加シーンこそ、およそ2分間と極端に短いものですが、むしろあれだけでアリスが今回の物語にどう関与したのかめちゃくちゃ奥深くなったんですよね。そのフォローがあのシーンだけで、はっきりいって多く語らないのが逆に活きてるといいましょうか。実にアリスらしい振る舞いといいましょうか。白玉楼編の完結、本編の完結だけでなく、1部・2部の集約まで成されていたのは正直舌を巻くばかりです。おかげさまで終わってからまた見直しました。

tokati0755: 東方のヒロイン達は総じてどこか自分のバックグラウンドを容易く他人に見せないと言いましょうか、いい意味で他人のテリトリーを尊重している感じがするのがとても格好良いなあと思っていて。努力とか辛い事とか、していてもけろっとして全くそれを感じさせず登場する気がするんですよね。これを踏まえて「アリスは……、」と考えた場合。ああなりましたね。最終話のアリスの台詞には気を使いました。誰にも気付かれる事のない彼女だけの真実ですから、説明的な言葉は厳禁でした。ましてや1部からの流れを知っている・覚えている人でないとピンと来ないんです。視聴者にとってはとても不親切なシーン。でももう、アリス自身がそうなのだからそれでいいのだと思いました。マキさんのように理解して頂いただけで全てが違って見える体験は、やはりさじ加減が大切です。

アイハラマキ: 実際に作るとなると、こういう手法ってどういう風に作ってるんだって常々感嘆するばかりなのですが、同じテキストで違う意味合いを持たせるってどこから先に着手してるんです?作者さん自身も逆推理していかないとこれ書けないと思うんですよね、そこがほんとすごい。無印の梃入れとはいっても、相当ですよね。だいぶ知恵熱でたのでは?

tokati0755: とにかく最初に設定をとことん理解して、このキャラはこういう体験をしてこういう立場でここに居るんだ、というのは分かっていますから。でも意識しすぎない事。東方キャラが演者として自分では計り知れない位に優れているというリスペクトをする事を心がけました。意識しすぎるとわざとらしくなってあれ?何かあるな、となってしまう。美鈴みたいに素直な子はちょっとボロを出した方が自然かな、とか。アリスに関してはとにかく徹底しようと。先程も言いましたが色鮮やかにする箇所は簡単に見つかったんですが、そのディテールは大変でした。知恵熱はそこに出たかなと(笑)

アイハラマキ: こうして伺っていると無印っていう土台があったとはいえ、構想を練りなおすのに相当時間費やした感がありますよね。もしかして無印からもっかい「雅」を作ろうってふと思い立ったのも、雅製作開始告知よりも随分前からだったのでは?

tokati0755: それは勿論そうです。絵を描かなければならない、と決めた時からです。自分が絵が描けるようにならないといけないと動いたのは、「雅」のためですから。
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- 本当のスタート地点。

アイハラマキ: 無印換算だとおよそ8年ですけど、レトスペの土台となるテーマやキャラ配役など着手しはじめたところから考えるともっとかかってそうですよね年月。

tokati0755: そうですね、正確に分析した事はありませんが(笑)。それでも結構覚悟の要る事でありました。特にイラストの制作については全然甘く見ていました。というのも、発進した地点で出来る演出と、回を重ねるにつれ出来る演出の差って最初に分からないじゃないですか。なので、見積もり段階として多くても1回に4~5枚だろうと思っていたんです。その中でもがくのが創作というものではありますが、ここはいいよ…って一瞬頭を過るんですが、いやそれ駄目だろ、ってなる。

アイハラマキ: 確かに。しかも雅でもってはじめてイラスト着手となるとそれこそ不透明すぎますよね。追っている身なので、よくわかりますが……相当数いきましたよねイラストの量(笑)

tokati0755: そうですね、当初の予定の何倍になったか分かりません。

アイハラマキ: そのへんの意地っていうんですかね、作中のフミノリの「俺で終わらせる」って意志と凄く共鳴するところありますよね。ひょっとすると作者って立場でありながら、作中の彼らにも支えられた部分ってあるんじゃないんですか?ちょっとロマンスめいたこといいましたけど(笑)

tokati0755: それはあると思います。特に3部の佳境はやはり、イラストを何度も描き直して彼女達の生の感情が少しでも伝わるように心掛けました。東方キャラの滅多に見れない筈の深い部分に切り込んでいるわけですから、自分を追い込まないでどうするとは思いましたね。

アイハラマキ: 「臨界点」から凄かったもんなぁ。CSでそれ以上ってのは小耳に挟んではいたものの、こちらが構えていたラインをことごとく飛び越えていきましたからね。本当にいい意味で予想できませんでした。

tokati0755: こちらに出来るのは、ギリギリまで出し切る事だけですからね。それを誰かしら汲んで頂ける事ほど幸せな事は無いですよね。

アイハラマキ: あれだけの情報量なんですけど、そちらの梃入れのとおり、ストレートにわかりやすくなってて。訴え方を変えたのが逆に活きたのかもしれません。43話ではついに1話と真逆だったと思いましたから。文字列でなく、絵のみで伝える技法。ビジュアルノベルってこうだよね!ってなりました。

tokati0755: 「魔法使いの夜」以来ビジュアルノベルはやっていないんですけれども。原稿にはもっと沢山の状況描写があるんですが、映像演出で押す所は尽くバッサリ切って行きました。それは仰るように、「雅」はもう映像で伝えるというスタンスに開き直ったと申しましょうか。なので文章は読むというよりも映像の傍ら頭の中に入って来るような感じを心掛けました。

アイハラマキ: 届きましたよ、PCディスプレイの境界を飛び越えて私たちのところまで。あそこ、VRでめっちゃみてみたい(笑)

tokati0755: VRは私も興味がありますね。自分とても酔いやすいんですけど、レトスペはあくまでノベルなのでカメラがブレブレってわけでもないのでいつか観たいなとは思っています。



- レトスペ世界を彩る選曲方法。

アイハラマキ: 先ほどお伺いしたシナリオ面のほかに、レトスペの肝といえばBGM。実に色んなシーンにマッチした楽曲群で、耳にも記憶に残る作品となりました。以前、BGMから映像を創造して作品作りに活かしていると仰っていましたが、あの楽曲はどのように見つけてくるのでしょうか?

tokati0755: 東方アレンジは昔からインストを好んで聴いている事が多くて、自然とその中でレトスペの世界観と合致した楽曲が見つかって行った感じです。無印の時はロック調の曲も多かったのですが、今回お借りさせて頂いたものは総じてオーケストラ・ストリングスが多くなりました。何よりもまず曲の素晴らしい点を最大限に活かす為に構成を理解する事。レトスペはノベルゲームのような形ですがあくまでも自分でメッセージ送りの出来ない動画です。その事を逆手に取ってBGMとの同期は意図的に図る事が出来ます。何度も聴き込む内に自然と頭の中で映像が流れて来たらそれを可能な限り当て込んでいく、といった段階を踏みました。勿論個人的にはボーカルも好きですし、可愛い系やら電波系なボーカル曲も多く聴いていますけれども(笑)。

アイハラマキ: では、tokatiさんがこれまでに出会った多数の曲の中から選定されたってことは、聴いた曲の数によっては作中の楽曲も様変わりした可能性もあるってことですか。

tokati0755: それはあると思います。やはり一個人で見つけられたり購入出来る曲には限度がありますからね。

アイハラマキ: それもまた面白いですよね。東方楽曲はそれこそ途方もない数ありますから、tokatiさんの出会った楽曲によってはルート変更もありえたって考えると、これもまたレトスペへと至る道みたいな感じで。こっちは543回どころの騒ぎでない分岐だと思います(笑)私もレトスペを通じてはじめて知ることのできた楽曲いっぱいありますし。それを探すのもまた愉しい。

tokati0755: それは私に限った話ではありませんけどね。全ての作り手が辿る道筋がそれぞれ異なっているからこそ個性が出て面白いんだと思います。

アイハラマキ: 逆に候補としては浮上したけど、作中では使えなかった楽曲とか、そういうのってあります?

tokati0755: 使用許諾が頂けなかった、お断りされた事は結構ありました。その場合は一からまたシーンを考え直すために脚本やイラストも作り直しましたね。

アイハラマキ: アー、やっぱりありますかそういうの。製作過程って色んなこと起こりえますもんね。大変でしたね…。

tokati0755: だからこそ許諾の頂けた楽曲群にはキャラクターと同様にリスペクトを持って”映像”という形になるよう心掛けました。

アイハラマキ: そのリスペクトが最大限に活かされて様々な名シーンが生まれました。さすがの技法でしたね。さて、少し趣向を変えまして、レトスペファンの方々から色んな質問を承っております。私からの質問と一緒にtokatiさんにぶつけていく次第です。引き続きBGMについていくつかあるので便乗していきますね。まずはこちらの質問ですね。「レトスペ使用楽曲の中で特にtokatiさんが惚れこんだ曲、あるいはこれ映像化できて良かったなー!って思える楽曲ベスト3」を教えてください。

tokati0755: ベスト3とかは、本当に無いですね。上下関係は付けられません。正直、全ての曲がベストです。あまり面白味のない答えでごめんなさい。レトスペでお借りさせて頂いた曲は制作だけでなく私生活でも沢山のパワーを頂いた曲ばかりです。一曲でも欠けたらこの動画は存在しませんし、全ての曲に心から感銘を受けたと言って良いです。
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アイハラマキ: そういうご回答のほうが嬉しいです。無理して選出されるより、素直に仰ってくださるほうが、より質問をぶつけた意味が出てきますから。そのお気持ちも凄くわかる気がします。私だって全部好きです。

tokati0755: 済みません、本当は3曲挙げてそれぞれへの思い入れを話したりするところですよね。でもこれ全曲になってしまいますから…(笑)

アイハラマキ: おそらく実際に選ぶにしても相当悩まれるだろうなと睨んでいました(笑)。もうひとつ、BGM絡みの質問がきています。これは作中とは逆ですね、「製作中に良く聴くBGMはありますか? やはり作中BGMを作業用BGMに使われていますか? であればどんな楽曲なのか教えてください。」とのことです。

tokati0755: 脚本執筆時は絶対に無音です(笑)。とにかく遅筆なので、集中して幾つもの候補から慎重に地の文や台詞を選んでいきますので。イラストや音がまだ関係のない段階での編集時にはとにかくレトスペに関係の無い曲を聴きました。何故ならやはり全ての楽曲にそのシーン毎の思い入れがあるので、場面とは別の曲が流れてくるとそっちのシーンの心情になってしまって自分の中でズレが出て来ます。東方楽曲は主に通勤時や出張の交通機関の中でヘビーローテーションして聴き込む習慣でした。邦楽・洋楽・アニソン何でも聴きましたが…、辛い時明らかにこの曲に助けて頂いたなという曲は幾つかあります。

 B'zの「GO FOR IT, BABY -キオクの山脈-」

 queenの「show must go on」

 般若の「あの頃じゃねえ」

この三曲は特に擦り切れる程聴きました。曲自体もどれも素晴らしいのですが、歌詞が終盤に向かえば向かうほど本当に響いて。どうしても煮詰まった時は夜中にこの三曲を聴きながらひたすら走ったりしました。

アイハラマキ: おー、今度それらの楽曲も聴いてみますね。歌詞まで汲み取るのtokatiさん深いですものね、気になります。

tokati0755: そうですね、特に「あの頃じゃねぇ」は普段聴かないジャンルをとあるきっかけで聴き始めた事で知りました。今の自分にこれほど染み入ってくる曲は無かったです。タイミングとしても最高でした。素晴らしい曲との出会いに感謝しています。

アイハラマキ: 色々あったのですね。ほんと曲に救われることってありますよね。私も何度か経験したことあるので、そういう楽曲ってやたら記憶に残っていくといいましょうか。響きますよね。

tokati0755: 人にはそれぞれ思い出の曲というものがありますからね。その時の環境にそれは大きく関係しているんですよね。

アイハラマキ: 歌詞や楽曲という点でひとつ私が気付いたことがあるんです。それをただ確かめたくて投げかけますね。作中では使われていない楽曲で、東方楽曲でもないんですが、これもレトスペに影響を与えたんじゃないか?って思うものがありまして。クレジットなどでよくFELTさんの楽曲が起用されたじゃないですか。そのFELTさんのオリジナル曲に 「After Rain」ってのがあるんですが、これの歌詞や曲名がなかなか似合ってるんですよね。

tokati0755: そうですか、その曲は大好きですけれども、レトスペと関連付けて聴いた事は無いですね。純粋に美しいメロディと歌唱が素晴らしいですね。

アイハラマキ: 関連なかった(笑)ご回答ありがとうございます。

tokati0755: いえいえ(笑)でも、作品を通じてこちらが意図していないことに触れていただける、FELTさんは本当に素晴らしい楽曲を手掛けられるとこですからその楽曲のひとつに気付いていただけたのは嬉しいですね。



- 東方キャラクターの魅力を引き出す。

アイハラマキ: シナリオ、BGMときてズバリ次はキャラクターにスポットを当てていきたいと思います。これも答えは多分明白なんですが……あえてお尋ねしますね。「最終回に全キャラへのお気に入りキャラクターアンケートが行われました。そこで逆にtokatiさんにとっての1番目、2番目に好きなキャラを今一度お聞かせください。」

tokati0755: 昔から揺るがず霊夢・アリスが同率首位ですね(笑)。でもこれはあくまで「東方ファンとして、」です。これもまた先程と同じような解答になってしまいますが、レトスペ内ではヒロイン達にはあまり自分の中で思い入れの優先順位といったものはありませんでした。それぞれの出番が回って来た時、一番そのキャラの事を好きになる感覚と言いましょうか。コメントには「うp主絶対咲夜さん好きだろ!」とか突っ込みが入っていましたが、本当に。真の意味で咲夜さんも一番の中の一人です。

アイハラマキ: やはりその2キャラは不動ですよね(笑)私も前回の対談の際にお応えしましたが、今回はね……先にいっちゃいますが、ごめんなさい、まだアンケート応えていないんですよ。とある理由がありまして。東方原作で一番好きなのは魔理沙であることは変わりませんが、レトスペを最後まで見届けた身としては今回、ようやくその境地に至ったって感じですね。いままさにtokatiさんが仰ったように、そのとき一番そのキャラが好きって状態です。今回は決めれそうにありません。
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みんな良い……!

tokati0755: そう言って頂けるのはとても嬉しいですね。これは無印から固く決めていた事ですが、東方キャラをリスペクトし登場しているシーンでは自分に出来る最大限の努力をして魅力を引き出そうと心掛けました。なので誰を引き立たせるために誰を下げる、とかいう発想が最初からありませんでした。イラストを自分で手掛けているのも今回は大きかったと思います。マキさんもイラストを描かれるから分かって頂けると思いますが、そのキャラを描いている時はそのキャラの事しか頭に無いですからね。一番好きな状態なわけです。

アイハラマキ: そうなんですよねー。主役はいるけど、かといって他のキャラはただの脇役か?っていうと決してそうじゃぁないんです。みんな立ち位置をしっかりとキープしていてその中で立派に昇華してるのがほんと魅力的で、1部・2部ではキャラの偏りがあったためにどうしても好き度の差が出たのですが、3部は本当に全員総出演で、そしてみんなに見せ場がある。そしてやっぱり霊夢が主人公なんだなって確信すると同時に、咲夜・アリスも同じくらいのヒロインだったと……。完全にやられました。

tokati0755: 度々出て来るフレーズですが、一つの舞台と演者として各キャラクターを自分は見ていましたので。メインとなるキャラクターにはそれぞれにしっかりとした役割を持たせ、「ただ出した」という事は絶対にしないよう心掛けました。

アイハラマキ: 小悪魔や中年おっさんまで出番があるとは思ってませんでしたよ(笑)

tokati0755: あとは特別出演のミスティアとか。あの面々は流石にサブキャラクターの立ち位置なので、逆に思い切りデフォルメしました。メインを張る物語であれば、また違ったキャラクター像になっていたと思います。

アイハラマキ: サブキャラはサブキャラとしての枠外に出てこなかったのがいいですね。立ち絵だけのキャラはサブキャラって認識になっていたので、美鈴はチルノはもう完全にメインキャストだったなーと。

tokati0755: そういう事ですね。

アイハラマキ: ちょっと被ってしまうのもありますが、キャラについてもいくつかの質問をいただいています。「作中におけるキャラ同士の絡みでtokatiさんご自身で気に入っている組み合わせは? また絡ませる上でどんな事に気をつけたのか、製作過程における裏話があれば是非。」ときています。

tokati0755: アリチルですかね!これは無印の時には無かった展開だったので、多いに楽しみました。それぞれがお互いの戦法をカバーするようでいて、協力関係には性格的に絶対ならないというか、馴れ合うという発想が無いというか(笑)。1部ではそれぞれ障壁として霊夢の前に立ち塞がったので、それを活かす形で3部にも再登場しました。そういった事もあり「誰が為」は予定より少し長くなってしまったんですけれど、個人的にはとても気に入っている回です。アリスと誰かを組ませるとして、普通は真っ先に魔理沙が思い浮かぶと思うんですけれども。でもそれだと自分的には余り面白くないんです。確かに1部で魔理沙が敵として現れる、という展開も意外性があって良いかも知れませんけどね。でも幻想郷そのものへの純粋な気持ちを表現する意味でもチルノである必要がありました。あと、絵的にこの二人が一緒なのがとても好きです。どちらのペースも我が強くて全く噛み合ってないのに共闘する所が(笑)。

アイハラマキ: 霊夢vs魔理沙もそれはそれで面白かったかも!チルノの頭脳としてアリスが補佐って今にして思えばかなり強いんですよね。以前喩えた「バットカンパニープラスペットショップ」って表現に自分でも戦慄しましたしw 奇しくも青というイメージカラーで絵になるんですよね。人里襲撃を救うシーンもそうでしたし、こちらも応援イラスト描いてるときあの二人のバランスなかなか良かったです。

tokati0755: あとは身長差ですかね(笑)。

アイハラマキ: そうそう(笑)口調のバランスもいいですよね。丁寧調のアリスに、ため口のチルノ。1部からして強敵でしたよね、ボスとしての存在感がとても強かった。そのギャップが凄すぎてあとでヒロインだったって最終回で理解ったの震えましたよ。作中、意図的にボム発動させたのもアリスだけでしたし。

tokati0755: でもアリスの方がよっぽど辛辣っていう。そこも自分としては強く意識しました。最初の敵は主役の強さを見せつけて百裂拳喰らってやられ役になるよりも、実は最初の敵が一番強かったんじゃないか?と思えるような作品が引き込まれます。実際、設定資料にはアリスは「レトスペ内にて最強」と書きました。でも強さ比べなお話でもないので、あくまで物語の導入のインパクト的な意味合いでの事です。あくまで自分はですけど、幻想入りにしろメジャーな組み合わせよりもこの組み合わせは原作では見れないから面白そう!っていうのに惹かれて視聴するきっかけになったりします。霊夢の窮地をパチュリーが二回も救っているのもそういった思考が働いていますかね。
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アイハラマキ: あー!そうですね、パチェさん良い所持っていきすぎなんですよ(笑)アリスとチルノはまさに最強とサイキョーの組み合わせだったのか……

tokati0755: それだと親父ィィィな人みたいですね(笑)

アイハラマキ: 良かったらその設定資料、拝見することってできますでしょうか。

tokati0755: 今ですか?かなり色々人にはお見せ出来ないものも書き込んであるので、あれですね、海苔弁にしてまたの機会にお見せします(笑)

アイハラマキ: 海苔弁(笑)

tokati0755: 最近何度も聞いたような言葉ですね(笑)

アイハラマキ: わかった、ごはん!!(チルノ談)

tokati0755: 『アリスとのガチバトルは個人的には好きな展開。実は開幕早々にボムを使わせたアリスが作中一番手強い(純粋に霊夢を追い詰めた)相手である』。そこだけ引用ですけど、確かに書いていますね。

アイハラマキ: あ、じゃぁ私の追及は結構いいとこいってたんだ…。言い換えればちゃんとtokatiさんの表現が伝わっていたってことですね。

tokati0755: 少なくともそれを明言せずに描写する、ということは心掛けなければならないと思っていましたね。それは3部で明かされた彼女の本当の意図の為でもありました。

アイハラマキ: アリス語りは改めてやりたいですね。いつかまた「雅な時間」でやりましょう…!本当は今ここで語りたいくらいの熱はあるってのはお伝えしておきます。

tokati0755: そうですね、楽しみにしています!

アイハラマキ: 続いて、面白い質問をいただいております。ちょっとそれに考えてお答えください。「レトスペ終了記念で出演者一同が集まりました。監督であるtokatiさんは演者である霊夢たちに声をかけていきました。さて、何と声をかけていったでしょう?ひとりひとりお願いします」。もはや大喜利ですね(笑)

tokati0755: 難しいですね(笑)。というのも、自分は東方Projectのキャラクターが大好きですけれども、身近な存在として考えた事は無いんです。一人残らず雲の上の人達というか…。このような物語を作る上で確かに彼女達の設定・魅力を自分なりに突き詰めては行きましたけれども、全部理解出来た、噛み砕けたという思いはありません。それだけ掴みどころが無い程の深みがこの世界にはあると思っていますので。どれだけ思い描いても届かない。常にこちらが必死で食い下がっている感覚でした。だから演者として声をかけるなんて、恐れ多くて想像も出来ないですね。

アイハラマキ: なるほど、ではフミノリや、中年。あと少年とかオリキャラサイドならいかがでしょうか。

tokati0755: もう盟友みたいなものなので。改まって言う事は、感謝の言葉以外には無いかと思います。

アイハラマキ: ありがとうございます。この場で形にできないほどの想いが伝わってくるようです。

tokati0755: 8年以上の想いがありますからね(笑) なかなか簡単に言葉でできるようなものでもありません。



- イラストに宿る息吹。

アイハラマキ: 続いてのお便りです。先にイラストを手掛けることで、キャラへの思い入れもよりいっそう深まったとありますが、「作中イラストCGで特に気に入っているのがあればベスト3」を教えてください。

tokati0755: そうですね。どれも等しく思い入れはあるのですけれども、26話の咲夜、41話の妖夢が抜刀術の構えをしている所、最終回の涙ながらに笑顔を向けている霊夢、ですかね。3つ挙げるとすれば。前述の通り、描いている時はキャラクターの事しか考えておらずどうにかして彼女の魅力を引き出したいと四苦八苦しますが、苦労した度合いがちょっと違いましたね(笑)。
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tokati0755: だから気に入っているというか、思い出深い、と言いましょうか。そのような感じです。

アイハラマキ: 意外にもアリス入ってないんですね。どっちかってーと怖い顔のアリスが作中では多かったですしね。その3つとも感情が特に篭った彼女らって感じです。

tokati0755: アリスはなんというか、自分の中で凄くイメージされているんです。レトスペのアリス像はこれだ、と。なので描き直しの苦労も少なかったです。

アイハラマキ: ふむふむ。そういうケースもありえるんですね。逆に……いや、これも思い出深いになると思うんですけど、最も難産だったイラストとかってありますか。作中で使われるまでに何度も描き直したとか、書き上げるのにめっちゃ時間かかったとか、とにかく一番苦労した絵。

tokati0755: 一番苦労したのは、そうですね…。それこそ26話の咲夜ですね。あそこは本当に大事だと思ったので、何回やり直したか知れません。あのシーンでは動的な演出は使えません。台詞とイラストで二人の感情を伝えないといけなかったんです。

アイハラマキ: なるほどー。多分、そういった熱意が「うp主絶対咲夜さん好きだろ!」ってコメント書いた人にも伝わったんでしょうね。

tokati0755: どうでしょうね。そうだったら嬉しいです。

アイハラマキ: 私も色んな作中イラスト好きなんですが、今回の白玉楼編で特に気に入っているイラスト、44話前半の白玉楼をあとにする紫が凄い気に入ってるんですよ。意外と思われるかもしれませんが。あそこはちょっと涙腺やられましたね…。

tokati0755: そうでしたか、ありがとうございます。紫はずっと作中あんな感じだったので、最後に誰も見ていない所でお疲れ様って言いたかったのです。そんな気持ちで描きました。
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アイハラマキ: そういえばあんまり作中イラストの公開されないですよね。もっといっぱいされてもいいような気はしてるんですが。

tokati0755: そうですね、やっぱり動画のアングルやエフェクトも含めて意図したものになっているんです。他の視聴者さんにも劇中CG公開してよと言われたんですけど(笑)

アイハラマキ: 公開を希望するのは、これは私の価値観なんですけども、作中のスクショだとどうしてもちょっと画質劣るんですよね。拡大とかしたりすると。その点、劇中CGはキレイな状態で眺めることができるって点と、実際の全体図がどうだったのかってのが知れる楽しみがあるので。動画内で使うために描かれたものも、静止画として価値があるなーって感じてる次第です。

tokati0755: それはありますよねー。

アイハラマキ: 単純にビジュアルノベル系のゲームでも、CG観覧モード(テキストとかない状態)で観れるので、そういった願いもあったりします。

tokati0755: 意外とですね、ここは映らないんだと分かっている箇所はばっさり体とか髪を切っちゃったりしてるんですよ。だから一枚絵にするならまたしっかり描かなきゃいけなかったりする絵もあります。実際の動画にしたときにどういう画になるのかって描いてる本人がわかってしまっているので。なので、”静止画として公開するため”にはやはり作業が必要なんです。済みません。

アイハラマキ: そうだったんですか。

tokati0755: まあ、殆どが動画のサイズより余計に大きくは描いていますが…。これがマキさんのおっしゃってくれた紫絵の原画です。

アイハラマキ: ……「ごきげんゆかり」(笑)

tokati0755: ファイル名は最後まで相当適当でした(笑)「やり直し守護ってみせくされや紫.psd」、「3人集合史規のみ42話にやそ.psd」、「妖夢VS霊夢ではなくおー清田ー清田ー.jpg」とか。意味がわからない。

アイハラマキ: にやそ?(笑)

tokati0755: 微笑みを浮かべる差分があるのでニヤリをにやそと読んでます。

アイハラマキ: (薬でもキメながら作業してたのかな……?)

tokati0755: 自分最近誰かに盗聴されてる気がするんですよ。盗撮もされてるかもしれないので携帯の電源をオフにしてください。

アイハラマキ: これはキメてる……。今から殴りにいきます。

tokati0755: 嫌ー嫌ー嫌ーーー嫌ー嫌嫌嫌ーーー

アイハラマキ: 京都飛鳥寺殺人事件(迫真)

tokati0755: 一気に罪状が跳ね上がりましたね…

アイハラマキ: ちょっとツボに入って苦しい(笑)

tokati0755: これがいつもの私らのノリですからね(笑)




立体音響の劇場版「レトロスペクティブ東方VR」。
観てみたいですね(Part.2に続く


# by makky_cys | 2019-10-30 22:00 | レトスペ雅

-雅と私、レトロスペクティブな時間- 第45回

Makkyです。
ここまで追っていただいた皆様に多大なる感謝を。


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レトロスペクティブ東方-雅-
第44話「あの空の彼方へ」

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※動画のネタバレを多分に含みます。
下記をお読みになる前に是非動画をご鑑賞ください。
PCブラウザ、またはスマホ横画面での閲覧を推奨しています。




第1部(人形師編)を見直したい方はコチラから↓



第2部(紅魔館編)を見直したい方はコチラから↓










前回までのあらすじ
最終決着。
全ての願いがひとつになるとき。
君は”生きる”という意味を知る。

雅な時間 白 Vol.18 (第44話「あの空の彼方へ」)_d0284766_20533906.jpg










最後まで泣くんじゃない
# by makky_cys | 2019-09-29 22:00 | レトスペ雅

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